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釣る前に、食べる前に、サラサハタという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、サラサハタという魚を知ろう!

サラサハタとは、スズキ目・ハタ科に分類されるハタの一種。相模湾以南の太平洋岸、琉球列島。~台湾、香港、南シナ海、西太平洋、東インド洋に分布。

サラサハタ(スズキ目ハタ科サラサハタ属)の生態

本州南部、九州でも揚がっているが、基本的に小笠原諸島と琉球列島以南。琉球列島も基本的には北限で、いちばん多いのは熱帯インド洋らしい。大きくなっても体長50㎝前後。左右に平たいので重さも最大で2㎏弱しかない。
和名は誰がつけたのかは調べているところ。「更紗羽太」だと思うのでインドや東南アジアで作られる綿織物の柄に似ているという意味かも。沖縄では「くちぐゎーみーばい」、「くち=口」、「ぐゎー=小さくて可愛い」なので口が小さくて、あまり大きくならない(可愛らしい)ハタという意味だろう。宮古島の「がちょううにばら」は鳥のガチョウに似た口の「うにばら=ハタ」という意味だ。

サラサハタの値段は?

国内だけでなくインド・太平洋の魚で今、もっとも高額で取引されている魚だ。一度だけ築地場内で見たが1㎏ほどの大きさのものが1尾10万円という噂がたった。まあそれは極端だけど、産地である沖縄でも水揚げ時の値段が1㎏あたり平均価格で20000円ほど。今回のものはほぼ1㎏なので産地での卸値1尾20000円である。物価の低い沖縄でこの値段だとすると関東にまできたら1尾10万円は真実なのかも。

「サラサハタ」の寿司…幻の美味魚。うまい、美味すぎる

”サラサハタ”

たかさんにそれを見せたら、

「ウルトラセブンかな、帰ってきた(ウルトラマン)かな、に出てた怪獣そっくり。やたら弱かったヤツ」

いきなりで何を言っているのかわからなかったが、朝ビールを飲んでいたマグロ屋が、うなずきながら、

「あ、いたよねー」

説明する気力がなくなって、とりあえず名人・たかさんに下ろしてもらう。肝や胃袋もていねいに取り分けて、四分の一だけ渡す。

「もっと置いていきなよ」

「冗談じゃありません。この魚をウォンテッドして何年かかったと思ってるの。二十年以上だかんね」

「これってうまいの?」

「これ派手だよね。熱帯系かな?」

なぜ怪獣ばかり浮かぶのかは不明だが、確かに奇妙な姿をしている。背中が異様なほど盛り上がり、頭部がこれまた異様なほど小さい。

この奇妙な姿の魚は沖縄では「くちぐゎーみーばい」で、直訳すると「口の小さいハタ」だ。
ただ実際には、「ぐゎー」は「ねーねーぐゎー」が「可愛い子ちゃん」という意味であるように、愛称として使われることが多いと石垣島のウミンチュ(海人)に聞いた。

サンゴ礁で見る姿が実にキレイだった、とベテラン刺突漁(銛で魚を突き取る)のウミンチュからも聞いたことがある。しかも沖縄で水揚げされる魚のなかでもっともお金が稼げる(高い)魚なのである。「ちゃん」をつけてもおかしくはない。

今回のものは沖縄本島での釣りものだ。サンゴ礁の宝石、なんて言われ、標準和名をサラサハタとい
う。

たかさんが四分の一から三切れを切り取って並べる。

マグロ屋は魚の味をみるプロ中のプロである。じっと押し黙って、

「これなら一万以上してもおかしくないな。オレなら今すぐ買う」

「それが無理なんだな。沖縄全体でも数年に一尾くらいしか揚がらないらしいし、日本全国に血眼にな

って探している人もいる。確か、石垣島の釣り漁師さんも二十年以上も前に釣ってから見てないって」

江戸前すし職人のたかさんは冷静だった。にこりともしないで、

「確かにうまいと思うよ。うま味も甘味の強さも、ほどよい食感も、何年か前に持って来たクエよりも上だ。でも歩留まり悪いし、誰も知らないし。なんて名前で出すのよ」

「出せないけど、出すとしたら『くちぐゎーみーばい』だよね」

「なんだって!『くいちがうーみーばい』でもおつけしますかって」

「たかさん、違うって『ぐゎー』よ。発音悪いね。ダメダメよ」

「なんくるないさー」

ちなみに今回のサラサハタは沖縄本島から、福島県郡山市にある日本一いい魚、珍しい魚を集める能力にたけた、郡山水産に送られてきたものを転送してもらったもの。当然、水揚げして三日以上たっているので、ちょうどハタ類の食べ頃だ。

握りにつけてもらったら、三人して黙り込んでしまった。ハタ類ならでは、上品な味わいなのにうまさの余韻が長い。しかもこの余韻がいいのである。三人とも“初物食い”だというのも大いに目出度い。結局、残り総てを握りにつけてもらった。

すしダネの良し悪しはつけて、すし飯と一緒になってからうまさの相乗効果を生むか生まないかだが、これは無限大に生む。生みすぎだ!

あっと言う間に食べて、お茶を飲んで茫然自失。舌の余韻を楽しむ。

「これ、昔から珍しかった?」

「そんなことないでしょ。要するに熱帯域でも沖縄でもうまいから取り過ぎたんだね。資源は大切に」

たかさん、いきなり
「これ、うちの優しい妻にも食べさせたかった」。

「優しか、ないでしょ?」

♦︎協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2018年5月1日号の掲載記事です。

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