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釣る前に、食べる前に、タチウオという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、タチウオという魚を知ろう!

タチウオは、スズキ目サバ亜目タチウオ科に属する魚類。回遊魚。頭はとがっており、一見獰猛そうな鋭く発達した歯が目立つ。体は全体に左右に平たく、幅は指4本などと表現される。

タチウオ(スズキ目サバ亜目タチウオ属)の生態

北海道南部以南、日本各地に生息。地域によって産卵期が春から秋と非常に長いので年間を通じて味がいい。リボン状で尾鰭も腹鰭も鱗もない独特の形態をしている。鱗がない代わりにグアニンという銀色の物質が体を覆っている。古くはこの物質から模造真珠などを作っていた。小さなときからどう猛な肉食魚でもある。

外見から普通「太刀魚」と書く。この形からくる呼び名はカタナ(刀)、サーベル、サワベルなど多い。ただ、「タチウオは立ち泳ぎするからで立魚と書く方が正しい」とも。実際、立って泳ぎ小魚などを下からまっすぐ浮上しながら襲うような光景を見たことがある。

タチウオの値段は?

年間を通して値段が安定している。小さいものは安く、大きくなるほど高くなる。
体の幅が10センチ以上1キロ近くなるとぐんと値の張る魚となり、1キロあたり3000円以上も珍しくはない。逆に体の幅が3〜4センチくらいはあまり高くはない。

関東では一般的に、このサイズを好まない。でも旬の靴べらサイズ、熊本県などではよく背ごしにして楽しむ。この背ごし、食べたら、うまさにビックリすること受け合い。ぜひともお試しあれ!キロあたり1000円前後。1本100円から200円が相場。

タチウオの釣行レポート

大津港「小川丸」では、6月後半からタチウオをスタートしているが、連日、好釣果を記録している。ショート船で出船しているが、トップ40本台や50本台を記録する日もある。
取材当日は港前の水深28m前後からスタートしたが、開始からここで好調にアタった。ときには海面下数mのところまでエサをくわえて追いかけてくる場面もあった。

タチウオと言えば一日で釣果がコロっと変わる気まぐれ魚の代表格だが、今シーズンは開幕から安定した釣果が続いている。「今年は6月の終わりごろから釣れ出しました。特別すごい釣果が出ているわけではありませんが、好不調の波が少なく狙いやすいですね」と、富津港「浜新丸」の浜名良男船長は言う。

「うちは7月に入ってから始めましたが、第二海堡周りの浅場か金谷沖のどちらかで釣れるという感じで、不調の日が少ないのがいいですね。昨年のようにこのまま秋冬と続くかもしれません」と話す、新安浦港「義和丸」の村上義人船長。

「タチウオ」の寿司…トロっと甘い。後からジワっとうまいがくる

この頃、『市場寿司』で海老名市在住、相模湾の超ベテラン釣り師、海老さんをよく見かける。普通老いたら、あまり目新しい釣りに挑戦しないものだが、海老さんの場合、流行りに敏感で、どんどん新釣法に挑戦している。相模湾の、現在の釣りの状況なども教えてくれて貴重なのだけれど、八王子は遠い。大丈夫なのだろうか、仕事の方は。

そんな海老さんから、ケータイ。

「今日大釣りしたから、市場寿司で待ってろ」ときた。

待ち合わせ時間ちょうどに、ピカピカのスポーツカーに乗ってご登場。クーラーをとんと置き、

「今日釣ったほんの一部だけどね」

中には、ヒラメにマルアジ、マサバにマルソウダ、大カマスなどなど、五目、七目の魚がわんさか入っている。これをクーラーごと渡して、颯爽と帰っていく。かっこいい。

翌朝、『市場寿司』に着いたら、なんとまた海老さんがいるのだ。

「海老さん、仕事大丈夫?」

「大丈夫さ、オレ社長だし」

海老さんの魚をネタケースに並べて、たかさん、まさにえびす顔。

「すごいぞ、サバも生でいける」

このマサバに、ヒラメ、マアジの生、マルソウダ、マルアジ、カマスのあぶりの全部が全部うまい。

「平塚の花水川沖で、ライトタックルルアーで釣ったのさ。たった四時間くらいでクーラー満杯。後は海の上で昼寝してやった。ハハハ」

「かっこいい!」

たぶん河口近くはエサが豊富なのだろう。脂がのっている。

夏休み、市場近くでバイト中の、美人女子大生ミヨちゃんも、全部海老さんネタのお任せ握りを食べて、サバを追加している。

ニコニコ顔の海老さん、「ナウイギャルにもわかるんだ」。すかさずミヨちゃん「ナウイって?」。

これを聞きつけて、いろんな人がやってきて、「相模湾の魚ってうまいんだねー」。一日中主役の海老さんだったのだ。

さて翌日、『市場寿司』でお茶を飲んでいたら、たかさん、

「昨日出さなかった魚があるんだけど。あんまり小さいからさ」

「なに?」と出してきたのが、靴ベラサイズのタチウオ。

「小さいのに卵持っててさ……」

話しながら、いきなりたかさんがボクの方にバーナーを向けてボー(だれもまねをしないように)。

「大好きなのがわかるけど、これだけはやめようよ」

リボン状の銀色の片身をあぶり、トントンと切り、握ってくれる。

いきなり香ばしさがツンときて心地よく、口に放り込むとトロっと甘い。後からジワっとうまいがくる。驚いたのは、ちゃんとシコっとしたほどよい食感が感じられること。

「これ昨日の全部よりもうまい」

きびしい残暑に、しばし『市場寿司』で休憩。古い週刊誌を見ていたら、団塊の世代の最後が昭和二十四年とある。「海老さんも団塊の世代なんだね」。そこにやってきたのが、バイト前のミヨちゃん。

ボクが読んでいる週刊誌をのぞき込んで「なんですか? 【ダンコンの世代】って?」、するとたかさんが、「戦後たくさん子供が生まれた時期があって、その時期に生まれた人達のことを【ダンコンの世代】って言うんだ。海老さんもそう」。

ミヨちゃんにも、これも海老さんが釣ったもの、とタチウオを出す。

「なーに、これ、超ウマイ!」

いきなり踊り出した。確かにこれは踊り出したくなるうまさだ。

計ったように海老さんが現れたので「【ダンコンの世代】偉い!」とほめてあげる。

「オレは【ダンコンの世代】じゃない! (昭和)二十五年生まれだ」

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2012年9月15日号の掲載情報です。

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