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釣る前に、食べる前に、クロムツという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、クロムツという魚を知ろう!

クロムツは、スズキ目ムツ科ムツ属の魚。関東では伊豆半島、伊豆諸島のクロムツとムツを確実に区別して売っているが、これが性格かどうかはわからない。ただクロムツの方が圧倒的に高価。魚類中もっとも値の張る魚である。

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クロムツ(スズキ目ムツ科ムツ属)の生態

今回の主役は体色からムツの可能性もある。実はムツ属の同定は非常に難しい。もともとムツは1種類だった。魚類学者の田中茂穂は1950年代に「神奈川県三崎では口がとがって頭の小さいツノクチ、口が丸く頭の大きいメダカ、銀白色で飛び抜けて味のいいキンムツの3つに分けている」として、3種の可能性もあると書いている。それが結局2種になった。ムツは北海道~九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸。九州~パラオ海嶺、台湾など広い生息域を持つ。クロムツは福島県~伊豆半島東岸までの実に狭い海域にしかいない。今回の主役が、相模湾初島周りの夜釣りで揚がったものなのでクロムツとした。
「モツ」と呼ぶ地域も多く、ほかにはクジラトウシ、ロクノウオなどとも。

クロムツの値段は?

クロムツもムツも超がつく高級魚である。都内デパートでは1切れの値段が3000円を超える。また築地場内では大形だと卸値がキロあたり5000円以上、ときに8000円くらいになる。今回のものは400gの小形であるが、それでも鮮度のよさからキロあたり3000円前後、1尾で1200円前後はしてしまう。身割れしやすいので釣り上げたら丁寧に扱い、丁寧にお持ち帰り願いたい。

クロムツの釣行レポート

夏場は出船時間が早くなることが多いが、鴨川・太海港「聡丸」の出船時間はなんとなんとの2時30分である。早朝というより深夜というべきか。6月末だったが当然真っ暗である。そして、9時ごろには帰港しているのだ。都心に自宅がある場合、11時前には帰宅可能なのである。

こうも毎日寒くては毎朝布団を出るのが本当につらい。しかし好きな釣りとなると勝手に目が覚めるから不思議だ。しかも、今回お邪魔した「浅八丸」が宿を構える平塚港は、東名高速と圏央道を利用すれば多摩地区の筆者の自宅からだと1時間もかからない。7時出船だから、5時前後に家を出れば間に合うので、非常に楽に布団を出られた。

「もうキンメが食っちゃいました。これじゃあ、アカムツが口を使うヒマがありませんね」。
なんとも贅沢な悩みに複雑な笑顔を見せる東伊豆富戸港「ひろし丸」の日吉博船長。

「クロムツ」の寿司… 食感シコシコほんのり甘く底抜けにうまい!

猛暑が一転、九月なのに肌寒いほどになった。また蒸し暑さがもどってくると思っていたら、このまま秋になってしまいそう。夏の暑さから解放されて、身も心もパワー全開、絶好調だが、なぜか市場に魚がない。

「海から魚が消えちまったのかな」

「今年は海の状態が遅れてて、アジもあまりとれなかったしね。好調なのは北海道のイワシだけだね」

「後は鮹さん頼みだねー」

実はこの梅雨明け以来、めぼしい魚がない日が続いている。それを穴埋めして余りあるというか、『市場寿司』にスター級のネタを提供してくれていたのが、ご近所の釣り師・鮹さんなのである。当然、「神頼みならぬ鮹さん頼み」となる。

たかさんと、こんな事を話していたら、不思議なもので、その張本人、鮹さんから「昨日夜釣りに行ったので魚を持って行きます」とメールがきた。「お待ちしていま~す」。

鮹さんの家から、我が家までは近い。あっという間に鮹さんのワンボックスカーがやってきた。後部には釣り道具一式、クーラーが四、五個つんでいる。そのなかのひとつを取り出し、ぱかっと開けたら三十センチ前後のクロムツが四尾、トゴットメバルにクロシビカマスまで入っている。市場ではまず手に入らない鮮度のよいものばかりで、釣った後の処理のよさもうかがえる。あまりの見事さに鮹さんのまん丸い髭面が神々しく見えてきた。

「どこで釣ったんですか」

「伊豆の網代から出ての夜釣りです。夜釣りなのでオモリも百二十号で軽いし、楽なんです」

いただいた獲物だけでも、へぼ釣り師だったボクには大漁に思える。しかもクロムツは流通の世界でもスターだ。さすがは鮹さん、名人である。そろそろ釣りを再開するつもりなので弟子入りするとしよう。

これを『市場寿司』に持ち込むと、たかさん「ワハッハ」と高笑い。

「これがいちばん儲かるのよ」

「???」

「歩留まりいいから半身で五かんとれる。クロムツは高級すし屋なら一かん六百円はとるよね。うちは安いから一かん三百円としてだ」

たかさんの頭脳はこのようなときに超高速で回転する。「昨日のパチンコの損が帳消しだ」、ということか。まことにくだらない。

「ダメ、いただきものは試食のつもりで、手間賃だけで出すのだよ」

たかさん、くるりと背を向け、あっと言う間に三枚に下ろす。

「脂あるねー。新鮮だから包丁が入るときにサクっと音がする。こんなの六十年以上生きてきてはじめてだよ。皮はどうする」

普通に皮を引いて握ったのがとてもきれいだ。口に放り込むとシコシコとして、ほんのり甘い。後味がいいのでいくらでも入る。

「これ底抜けにうまいね」

「なにそれ?」

「食べても、食べても、食べられる。切りがないってこと」

さてさて、これでめでたしめでたしのはずだったが、実は翌日の方がもっとうまかったのだ。ムツは新しいほどいいと思っていたのに、一日寝かせた方が断然うまい。そして皮をあぶって握ったものが、これまた素晴らしい。問題は見た目だが。

「今日はあぶったほうが人気だよ」

「一度食べたらやめられない」

「これエサはなんで釣るの」

「サンマだって」

「へー、クロムツって肉食系?」

「歯を見りゃわかるでしょ」

「じゃあサンマは草食系。オレ、生まれかわるならクロムツだな」

「たかさんが生まれかわるなら、クロムツでもサンマでもないね」

「雑食系、ですね」

常連さん、正解!

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2015年10月1日号の掲載情報です。

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