キス名人に聞く。この大会の魅力


3匹の合計重量で順位が決まる。入賞ラインは25cmオーバーを3匹そろえることだ。
6時に港を着くと、馴染みの顔がちらほらと見える。八景界隈の船宿でよく会う常連さん達、私が手伝っている親子教室のインストラクター達、釣具メーカーの知人など。今日の出場者数はなんと696名、これは知っている顔も多いはずだ。
「蒲谷丸」で参加受付を済ませ、出船時間を待つ間に達人探しを開始、お目当ては戸嶋浩明さん。一昨年の本大会の優勝者であり、シロギス釣りの世界では誰もが知っている達人だ。その戸嶋さんに投げた質問は、金沢漁港大会の楽しみ方だ。大会に興味はあるけど雰囲気がわからない、出場しようかどうか二の足を踏んでいる人向けに大会の楽しさを教えてくださいとお願いした。そして2つの答えをもらった。
大会の魅力ひとつめは、通常の乗合と違った大型シロギス狙いができること。3匹の重量で競う大会なので、各船長は秘蔵の大ギスポイントへ向かう。数は出ないけれど、尺ギスに迫る大型が潜むポイントだ。乗合船ではある程度数を出す必要があるので、じっくりと大型を狙うことは少ないが、大会ではそれができるのだ。そして、大型シロギスが食ってくることには運の要素が多分にある。自己記録サイズのシロギスをゲットできる可能性は高い。
そして2番目は、上手な人の釣り方が間近で見られること。各船、必ず何人かは熟練者が乗っている。これからシロギス釣りの技術を高めようとする人には、彼らの釣り方はとても参考になるはずだ。特に仕掛けを入れる方向や入れ替えのタイミングを見て欲しいと戸嶋さんは言う。漫然と仕掛けを落とすのではなく、潮の流れや船の方向を読む。言葉で説明するのは複雑だが、間近で上級者の釣り方を見れば理解はしやすい。戸嶋さんのこの2つのコメントは、私にとっても参考になるものだった。
根周り狙いで20cmオーバーが

大型狙いでは胴付き仕掛けが効果を発揮することが多い。こちらは「蒲谷丸」の船宿胴付き仕掛け。

8月19日、金沢漁港シロギス釣り大会が開催された。好天に恵まれ、各船とも賑わいを見せた。

ナイスフィッシング! ナイススマイル!

さて、出船時間の8時になった。各船は港をゆっくりとでて、八景島シーパラダイスの前で止まる。そして開始の合図で、一斉にポイントへと向かう。各船長とも、頭の中では大型シロギスを釣らせる絵図ができているに違いない。「蒲谷丸」が選んだポイントは、猿島の東沖だった。オモリが底を引きずるときにゴトゴトとした感覚が伝わってくる。小石交じりの根回りなのだろう、まず顔を出したのはキュウセンやカサゴ。根まわりの大型シロギスを狙うという船長の意図が明らかに伝わってきた。
外道にまじって、20㎝前後のシロギスが上がり始める。しかし、隣のベテランは「これじゃ小さすぎ」とつぶやく。今日の狙いは25㎝オーバー、それを3匹そろえることなのだ。
アタリは多いが、本命のシロギスからは意外に少ない。みな黙々と入れ替えをし、誘い続ける。シロギス釣りは手軽さで人気の釣りだが、こういうストイックな釣りも楽しいものだと思う。みなが真剣に楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。
私はなかなか検量対象数の3尾に届かなかったが、10時近くになってやっと20㎝前後を3匹そろえ、これで一応格好はついた。とはいえ、入賞にはまだまだ遠く及ばない。集中力を切らさないように、丁寧に誘ってかすかなアタリを捉えるようにする。
予想以上に楽しい。来年も参加するぞ!

「忠彦丸」に乗船した門間祐介さんが、重量394gで優勝。ハワイ旅行をゲットした。
そしてやってきたのが、竿を持ち上げると同時にきたそれまでと違う強烈な引き。巻き上げ途中にギュン、と引っ張ること数度、上がってきたのは23㎝のまずまずサイズ。この調子でサイズアップすればもしかしてハワイ? と思ったのは一瞬。その後はまわりも良型ラッシュ、私は焦るが中小型ばかり。
終了時刻の1時を迎え、私の釣果は11匹。帰港の検量では255gと船で真ん中くらいの成績だった。「蒲谷丸」の最大サイズは28㎝、これを釣り上げたのは女性だ。
各船宿が検量結果を持ち寄って、表彰式が始まった。優勝者は「忠彦丸」で394gと大型をそろえた門間祐介さん。拍手の中、ハワイ旅行を手にして満面の笑みだ。
金沢漁港の大会参加は初めてだったが、モチベーションを高く保つシロギス釣りは予想以上に楽しめた。来年もまた参加するとここに宣言しておきます。
以上の記事は「つり丸」2012年9月15日号の掲載情報です。
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今回、取材にご協力いただいたのは、神奈川・金沢漁港「蒲谷丸」。「蒲谷丸」では、28㎝のジャンボギスも飛び出した。