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釣る前に、食べる前に、スギという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、スギという魚を知ろう!

スギは、スズキ目に分類される海水魚。温帯域、亜熱帯域に生息する。大西洋ではカリブ海を含めて広域に分布、インド太平洋ではインド・オーストラリア・日本などに分布する。

スギ(スズキ目スギ科スギ属)の生態

全世界の暖かい海域を回遊している、1メートルを超える真っ黒な魚。鹿児島の定置網では網から上げようとすると、やたらに強い力で跳ね回るので「暴れん坊将軍」というらしい。なぜ「将軍」と聞くと意味はない模様。釣って面白いらしく、鹿児島の漁師さん曰く、「引きの強さはお殿様んごたあ、値段は足軽たい」とも。
世界中に1科1属1種という不思議な魚でもある。江戸時代にはコバンザメの仲間だと思われていたらしく、コバンザメノコバンノトレタウオ(小判鮫の小判の取れた魚)と呼ぶ地方もある。
成長が早く病気にも強いので、今もっとも注目を浴びている養殖魚で、古くは「黒カンパチ」の名前で売られていたこともある。東南アジアでは養殖が盛んで人気が高い。
クセもなく身色がきれい、しかも味も悪くないのに、市場での評価は極端に低い。築地場内などに並ぶのは3キロから5キロ前後が多く、買い手は日本料理店ではなくフレンチやイタリアンのシェフであるという。

スギの値段は?

1キロあたり600円前後が相場。5キロサイズでも1尾3000円である。あまり釣れない魚ではあるが引きの強さはシマアジ級だという。味と、釣り味を楽しもう。

「スギ」の寿司…ブリやカンパチに近いが、でもやはりスギはスギ

梅雨最中の蒸し暑い日、鹿児島県南さつま市の漁師さんから「きれいなスギがとれたんですが、いりませんか?」とケータイ。「はい、ください」と返事して、翌日に届いたのが、三キロ級の手頃なスギ。

若魚期の縦縞が、うっすらと残ったきれいな魚体を大急ぎで撮影。忙しい時期だったので、すし職人のたかさんに丸ごと渡し、そのまま都心に出た。朝いちばんの打ち合わせ中に、たかさんからケータイで、

「あれなんだよ?」

「スギだけど」

「コバンザメじゃないのか?」

実はたかさん、コバンザメを握るのが大好きなのだ。スギは江戸時代などにはコバンザメの仲間だと思われていたらしいので、たかさんの考え方もあながち間違いではない。

「スギかー。久しぶりだからわからなかった。そうだスギだ」

翌々日、朝イチに『市場寿司』をのぞいたら、スギは完売していた。

「確か昭和四十年代半ばかな、よくすし屋でスギを使ったんだ。当然、スギじゃ売れないから、カンパチだ、とかヒラマサだ、とか言ってさ。今じゃ犯罪になるよな」

「ちゃんとスギで出したよね」

「出した、出した。でもあれカンパチの仲間だよね」

「違うよ、スギはスギ」

姿も形も違う魚だが、身質がブリの仲間に似ている。それで今でも勘違いしているすし職人が多いのだろう。世界中にスギ科の仲間はスギ一種類だけというのも珍しい。

結局、スギを食べていないので、日本各地の漁師さん、築地場内の仲卸にスギをウォンテッド。

「たかさん、今度はボクが食べたいから、スギを取り寄せしたからね」

と数分後、築地場内の仲卸からケータイが来て、あっという間の午前十一時には五キロサイズが届く。追いかけるように仲卸から、

「定置ものだと思うでしょ。違うんだな。釣りものです。ちゃんと活け締め。ちょっと高めだけど食べてみて。おいしいと思うから」

閉店後の午後二時に出直して、店の前でスギと格闘するたかさんを励ましてあげる。「がんばれー」。さすがに五キロを下ろすのは大変だ。三枚に下ろしにして、ぬれたさらしに包んで冷蔵庫にしまう。

片付けが終わり、ぱかんとビールを開けると、まるで測ったように揚げたてのスギフライが目の前に。市場内の食堂の揚げたてがうまい。

「この時期ならブリに負けない味だよね。照り焼きもいけそう」

さて、翌日の握りがまたうまスギなのであった。この味、いかに表現すべきだろう。たかさん曰く、

「味の濃いブリだよね。甘みはほんのりで、うま味が強い。シコシコした食感が心地いい。むしろ天然カンパチの味に近いかな」

でもブリでもカンパチでもない食感と味で、やはりスギはうまいと再認識する。一時は養殖ものが出回っていて、すしダネとしても人気が高かったのだが、わかる気がする。

ボクより先に来ていたOLのレーコちゃんと、まるで座敷童のように、いつの間にかいた相模湾ベテラン釣り師・海老名の海老さんが、仲良く、スギの握りに舌鼓。

「これなんていう魚?」

レーコちゃんが大きな目をうるませて聞くので、スギという魚で、東南アジアでは養殖されるくらいに人気がある、などなど教えると。

「うわー、また初めての魚食べた。感激、スギちゃんおいしい」

「うますぎるからスギ様だね」

あまり釣れない魚なので、興味薄なのか、押し黙っていた海老さん、

「そういやー、杉様、暴れん坊将軍、またやらないかな?」

「……? あれ、杉様だっけ?」

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2013年7月15日号の掲載情報です。

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