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「タチウオ」の寿司…恐るべきうまさの秘密は、その塩加減にあり

「タチウオ」の寿司…恐るべきうまさの秘密は、その塩加減にあり

今年は不思議なことに梅雨に入るやいなやいいことが続く。日々楽しく、梅雨なのに爽やかな春のようだ。このままいい雰囲気で一年暮らせるといいな、なんて梅雨空に祈る。不思議なことに、たかさんまでもニコニコと晴れやかな顔をしている。この幸せな夕にタチウオの塩焼きと真子の煮つけを肴に、酒は熊本県「千徳 大吟醸」。

「ええタチウオ」を口に入れた途端、「うん」と声を発して黙り込んでしまった…恐るべきうまさの秘密は、その塩加減にあり

宮崎県日南市に『ねこや商店』という不思議な名の魚屋さんがある。ご主人、門川安秀さんは水産業、料理関係の人々から親しみを込めて、ねこさんと呼ばれている。ミシュランガイドで星を獲得しているような有名店に魚を送っていることでも有名で、魚の扱い、料理法などに関しては業界随一の方である。

ある日、「今、揚がっているタチウオがええんですわ、送りましたので食べてください」という電話が入り、翌日にはその「ええタチウオ」が届いた。航空便で届いたそれは、丸のままではなく丁寧に保鮮紙にくるまれていて、皮目をあぶってある。一人で味見するのはおそれ多いので、『市場寿司』に持ち込んだ。

たかさん、慎重に紙を剥がして、切りつけて口に入れた途端「うん」と声を発して黙り込んでしまった。続いて食べた、ボクの方も言葉が思い浮かばなくて、黙り込むしかない。

うまいとしか言い様のない代物なのだけれど、塩加減が絶妙で、この恐るべきうまさの秘密はその塩加減にあり、と二人の意見は一致。ただ、そこから先がわからない。

これを握りに。わさびもしょうゆもなしで、つまんでまた黙り込む。

「うますぎて声が出ねーな」

「これは塩加減がいい、だけかな」

ねこさんにケータイをかけて聞くと、なんともあっさりと

「ええ味でしょ。別に変わったことはしとりません。これがとれた海域の海水でしめて、あぶっただけ」

とするとこれを再現するには遠路宮崎県日南市まで行き、海水をくんでくるしかないのか。海水と同じ濃度の塩水を作りいろいろ試してみた。これでも十二分にうまいが、ねこさんのと比べるとダメなのだ。

さて、梅雨入りして数日後、都心にいたら、知り合いの自称、釣りガール、アユちゃんからケータイが。アユちゃんはボクの書籍のイラストを描いてくれているのだけれど、本業は釣りなのだと言う。

「今、どこですか?」

「日本橋だよ」

「これから会えますか?」

いつかこんな日が来ると思っていたのだ。わくわくするな、と待ち合わせの品川まで行くと、保冷バッグを渡されて、「それじゃー」とあっさり帰って行く。中身は中くらいのタチウオが一本。考えてみるとルアーのタチウオ釣りに夢中だって言っていたし、「釣れたらあげます」とも言っていたのだ。

『市場寿司』に持ち込むと、「誰にもらったの」、「美人釣りガールのアユちゃんだけど」、「どれくらい美人なの?」というので写真を見せたら、「本物の美人じゃーん」とたかさんもニヤつく。「ナンパしたーい」。

三枚に下ろして濃度三パーセントの塩水で十分立て塩にする。よく水分をきって、バーナーであぶって握りにしてもらう。

「いい味じゃない。合格、合格。やっぱり可愛い娘が釣った魚は味がいいね。身が甘~く感じるよ」

居合わせた常連さんにも好評だったが、やはりねこさんのにはかなわない。漬け場をみるとたかさんが同じ立て塩にしたものを酢で洗っている。これを握りにするつもりが、

「あんまりキレイじゃないな」

「身の方を上につけたらいいかも」

高知県東洋町の家庭では、皮を下に、身の方を上にして握りずしを作る。これを「かいさまずし」という。やはり酢で締めると皮目があまりキレイじゃないので、「かわさま(逆さま)」につけるのだろう。

これも実にうまい。酢で軽く洗っただけなのでほとんど生で、身にほんのりと甘みがある。

よこしまな気持ちはまったく、ぜんぜん、寸分もなく、アユちゃんにお礼のご馳走をしたい、なー。

タチウオ(スズキ目タチウオ科タチウオ属)

北海道から九州南岸まで日本各地の沿岸に生息している。夜行性の肉食魚で産卵期は春から秋と非常に長い。
タチウオ科で食用となっているのは九州南岸以南にいるテンジクタチ、オキナワオオタチなどもいるが、漁業的に重要なのは本種のみ。古く東京では「たちのうお」もしくは「たち」と呼び、関西以西で「たちうお」と呼んでいた。明治末から昭和初期に作られた倉場富三郎『グラバー図譜』には「たちうお」と表記されている。ほかには「かたな」、「さわべる」など「刀」に見立てた呼び名が多い。また徳島県では小型魚を「下駄の紐」、「草履の紐」と呼ぶ。
小型は非常に安いが、500グラムサイズくらいから値が上がる。幅8cm前後、500グラムの中くらいのタチウオで鮮度がよければキロあたり2000円ほど。1尾1000円前後にはなる。産卵期が長いので年間を通して味のいいタチウオがとれるのも魅力。

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2015年7月15日号の掲載情報です。


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