ベニアコウ仕掛け&釣行レポート

剣崎間口港「小やぶ丸」が「米櫃」のひとつであるベニアコウを遊漁者に開放し始めたのは一昨年の暮れ。
昨年2月の筆者釣行が実質的なスタートであり、8.5㎏が記念すべき「竿釣り第一号」でもあった。
問い合せがあったと聞くが、年末の我々も含め、荒天で殆ど出船NG。
今シーズンも漁では相応の実績を上げているが、いずれも「遊漁者は不可」の専漁ポイントでの事。
ただし、「城ケ島西沖は全く手を付けていません。魚が溜まっていると思いますよ」とのことで期待が持てる。
この時期稀に見る凪に恵まれた2月21日の往路、鈴木知也船長の表情には少なからぬ自信が見て取れる。
同乗する「TEAM OKAMOTO」メンバーはこの日が2年半振りの船釣りとなる菊島さんと、11月末の新島キンメで「最後に繋げた」桜井さん。
ともに「小やぶ丸」には初乗船。初めての船&釣場に期待充分、不安半分!?
小やぶ丸のベニアコウ仕掛けは「広い幅を探る」のを前提としたハリ間隔4m、ハリス1.5mの8本バリだが、船長は漁も含め「食ってくるのは下3~4本がメイン」だと言う。
船に用意された鮮度の良い大振りなスルメイカのタンザクと、筆者がべニアコウ&大アラ用に提案した幅2㎝、長さ22㎝のニッコー化成「スーパーイカタンMEGA」を1本おきに配し、いざ水深1000mへ第一投。
仕掛けが綺麗に海中に入り、ここから長くもあり、短くもある15分。
遥か海底に想いを巡らすうちに大きく糸フケが出て、ワンダーⅠ2㎏の着底を知らせる。
「オモリが海底を叩く状態でアタリを待ち、アタリが出たら送り込む」が「小やぶ丸」の釣りスタイル。
郷に入れば郷に従う、が深海釣り基本中の基本。
底トントンで流す事5分。
タナを取り直した、まさにその瞬間。
「ガン、ガン、ガンッ!」一目でそれと知れるアタリが竿先を叩く。
「本物だっ!!」思わず口にした一言。
あまりに呆気ないこの日の出逢いだが、魔性の微笑みを拒む理由は一つもない。
一呼吸置いてクラッチを切り、オモリを着底。更に2m程ラインを繰り出せば、再び「ガン、ガン、ガンッ!!」新たな魔性のサイン。
もはや「微笑み」でなく大笑い状態!?
更に5分後。
「こっちもアタった!!」ミヨシから菊島さんの声。
「胴の間が抜けちゃったね」。
現在、遊漁ではこの釣りだけに乗り組む春治大船長が苦笑する。
「漁でも4本の道具に同時に食う事はまずないですから。仕方ないよね」と知也船長。
そのまま流す事25分。
「前から順に」と待望の巻き上げ合図。
まずは菊島さん。ロッドの曲りは上々。
巻き上げの滞る様が遠目にも見て取れる。
桜井さんが巻き始め、しばしの後「トモも巻いて」でスイッチON。
繰り出したラインを巻き終わると、ロッドが大きく絞られ、海底で踏ん張る抵抗に釣力コントロールが作動。
弥が上にも期待が高まる。
まずは菊島さんの仕掛けがスーッと前方に走ってボコン! 深紅の大輪が紺碧の海原に咲き誇る。
2年半振りの深海釣りに「昨日は興奮して寝られなかった」と笑った彼に、乙姫様が贈った「ご祝儀」はグラマーな6.3㎏。
祝福の握手を交わし、さあ、次は自分の番。
500mでの滞り、それを過ぎて「浮きのムーブ」を見せながらのビッグテンション。
やがて前方に走り出すライン…そして迎えるフィナーレ。
海面に浮かんだのは「下から3本目」の5.5㎏の1匹のみだが、手繰り寄せれば特大イバラヒゲを挟んだ下バリにもガスが抜けた5.2㎏。
アタリそのままの「魔性の紅」×2には敬意を表してハンドランディング。
知也船長とガッチリ握手を交わせば、我が心は充たされ、既に「本日終了」モード。
2投目は底潮の流れが遅くなり、ソコダラ類のみ。
そして迎えた潮止まりの3投目。
半ば諦めムードの中、千載一遇のチャンスを掴んだ桜井さん。
海上ベタ凪で外れる心配は殆どない。
「全員本命キャッチ」の快挙は目前だが…
巻き上げを終えて浮上を待つも、一向に魚影は見えない。
「いないのか?」仕掛けを手繰る程に曇る桜井さんの表情を最後の最後、パッと晴らせた3.5㎏で大団円。
船上の全員が城ケ島西沖に咲き誇る紅花の魔性にドップリと浸かり、酔い痴れたのだ。
城ヶ島西沖で深海釣り 幻の魚「ベニアコウ」

ベニアコウは「超」がつくほどの高級魚。
刺身、鍋ネタ、煮つけ、焼き物、何にしても最高の味だ!

城ヶ島西沖、ポイントの水深は1000m前後。
スカイツリーの高さプラス、東京タワーの高さ、それが1000mだ

深海1000mを大型リールで狙う

「小やぶ丸」では「広い幅を探る」のを前提としたハリ間隔4m、ハリス1.5mの8本バリ仕掛けをすすめている

巻き上げの最中。竿の動きと電動音で魚の種類、大きさを想像する。深海釣りでもっともワクワクする時間だ

海面にはじけた深紅の魚体。まさにベニ色、本命だ!

大型を取り込む。嬉しい瞬間だ

この日最初にベニアコウを上げた菊島さん。6.3㎏の大型は、大金星だ!

城ヶ島西沖に浮上した深海の紅花。
5.5㎏と5.2㎏、まさかの良型ダブル!合わせて10kgオーバーだ!!

船中全員が本命ゲット。ベニアコウでボウズなし、は快挙だ

今回、取材にご協力いただいたのは、神奈川・剣崎間口港「小やぶ丸」
この時期は凪で船が出られるところですでに、その人達に運がある、ってことですよ」
「スカイツリー」プラス「東京タワー」の深さ、1000メートルの底まで2㎏のオモリでも15分かかる。
剣崎間口港「小やぶ丸」の鈴木知也船長が1投目の待ち時間に語った言葉が妙に耳に残ったこの日。
着底後わずか5分、筆者に2度も微笑んで見せた「魔性の紅」からのシグナルに興奮冷めやらぬ中、ミヨシからも歓喜の声が上がる。
どうやら、アタったようだ。
巻き上げに入り、水深1000mのかけひきも高性能の最新リールで余裕しゃくしゃく。
ただただクライマックスが待ち遠しいばかり。
まず紺碧の海にこの日最初の大輪を咲かせたのは菊島さん。
2年半振りの挑戦を6.3㎏の金星で飾る。
待つことしばし。
筆者の仕掛けも上がってきた。
遥か前方の海面が弾け、まずは5.5㎏。
その先に「もうひと花」の5.2㎏。
夢のようなシーンにしばし見惚れる。
「船中型見ず」が珍しくないベニアコウ釣りで、3人ボウズなしの3.5~6.3㎏を4本。
帰路は無風ベタ凪も翌日は南風で出船中止と聞かされる。
改めて我が身の幸運に感謝、の一日と相成った。
以上の記事は「つり丸」2015年4月1日号の掲載記事です。
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