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釣る前に、食べる前に、シラコダイという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、シラコダイという魚を知ろう!

シラコダイとは、伊豆諸島、小笠原諸島、千葉県外房から九州南岸の太平洋沿岸、屋久島までの浅い岩礁域に生息している魚。相模湾などの定置網にもよく入り、大きくなってもせいぜい全長15cmほどのサイズ。

シラコダイ(スズキ目チョウチョウウオ科チョウチョウウオ属)の生態

シラコダイは派手な色合いのチョウチョウウオの仲間の中でももっとも地味な色合いをしている。
本州・四国・九州の太平洋側の狭い海域に多く、明治16年(1883年)に記載された時のタイプ標本も国内で採取されたもので、学名に「nippon」がつく魚のひとつだ。

シラコダイというのは漢字にすると「白子鯛」で神奈川県江ノ島での呼び名。この意味を調べているが全くわからない。
高知県では「あぶらうお」で、体表を触るとヌメヌメと油を感じるからだと思う。
浅場にいて割合、簡単に釣れる魚なのに地方名が少ないのは、小さすぎてほとんど利用されていないためだと思われる。

シラコダイの値段は?

国内では全く流通しない。たぶん好んで食べている地域はまったくないと思っている。
流通上手に入らない魚なので、探すととても大変である。ということで市場価格はないので1尾0円でしかない。
当然、まずいだろうと思いきや、意外にもイケル味。釣れたらお持ち帰り願いたい。

シラコダイの寿司を食す! 脂がほんのり甘く、食感が素晴らしい

市場の釣り名人、クマゴロウがシマアジねらいで伊豆に通い始めた。

「昨日は十キロが二本もきた」

「すごいじゃん。少し分けて」

「船で二本って話だよ」

店には大量のイサキが、色とりどりの小魚と一緒に置かれていた。

昼下がり、その小魚とイサキなどを持ち『市場寿司』に顔を出す。
クマゴロウが「みんな捨てちゃうんだよ」と言って持ち帰ってきてくれた小魚の刺身が、とてもいい味だった。

たかさんも味見をしながら、

「小味がきいてるって言うけど、手のひらサイズの魚はいいね」

利島周りの大物釣りでハリスは5号以上、ハリはヒラマサ用だという。
小さなスズメダイの口を開いてみても、それほど大きなハリにかかるとはとても思えない。

「たかさん、クマゴロウって釣りの大、大、大天才だと思う」

「大天才ってピカソかよ」

「なんでピカソじゃ。あのね、クマゴロウが狙ってる魚って、こーんなに大きいわけ。だからハリもこーんなに大きい。それでこの魚見て」
 たかさんも両手を広げて、

「こーんなに大きいのか。そっちを持って来てくれるといいなー」

「とにかく、こんなに大きなハリでこんなに小さな魚釣るのって、天才にしかできないでしょうが」

 黄色いの、赤いの、オレンジ色の、と並べてみると非常に美しい。

「たかさん、下ろした魚、分けているよね。種類わかるよね」

「あ、いけね。一緒にしちゃった」

コガネスズメ、ヒメ、アカササノハベラにシラコダイの五種がバットのなかで一緒くたになっている。
総て白身なので、慎重に種類ごとにわけるが、コガネスズメとシラコダイが微妙にわからない。

「いちばん小さいのがチョウチョウウオ(シラコダイ)じゃないかな」

「たぶんね」

「これはどうする?」

「バカ言ってんじゃないの」

なぜか一尾だけくすんだ色のキタマクラが紛れ込んでいたのだ。

いろいろつけてもらって、コガネスズメはわかる。
アカササノハベラも、ちょっと弾力のある白身でわかる。ヒメはそぎ切りにしても骨が当たるのでわかる。
とするとシラコダイもわかって目出度し、目出度し。

どれも淡泊な白身だけど、コガネスズメとシラコダイが断然うまい。

「特にこれいいね」

たかさんが指さしたのが、なんとシラコダイだったのだ。
すしネタにしていちばん小さいので丸づけ(一尾で一かん)にしたら、実にうまい。

表面がぼやけて見えるのは、脂の層なのかも知れない。これがほんのり甘くて、しかも食感がいい。

「人生最大の発見かも」

「なんだー、大げさな」

「シラコダイがこんなにうまいなんて、神様だって知らないよ」

伊豆諸島から相模湾というのは不思議な海である。
例えば伊東沖のマアジは都内でも有名だし、幻の魚、クロムツもいる。どんな魚も相模湾にいるとうまくなる気がしてくる。

「相模湾って不思議。こんな小さな魚が、こんなにいい味なんてね」

そんなことを話していた数日後、またまたクマゴロウが色とりどりの魚を持って来てくれたのだ。

「また行ったの、釣りに」

「いいじゃないの、幸せなら」

「シマアジも十本以上上がったよ」

「それで?」

「(ケータイを出して)これね」

 なんとクマゴロウが持っていたのは大本命だった。「連休も行くから」と言ってスキップで帰って行く。

「くそー、こっちは仕事なのに」

「うちは今年も熱海なんだ」

たかさんちは結婚四十周年で今も♡♡まったくやけないけど。




◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2019年5月15日号の掲載記事です。

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