サメの攻撃上手くかわして 5.5㎏!!本命の花が咲く!
「ほらっ、食えっ!!」目前を徘徊するヨシキリザメを船から遠ざけるべく、イバラヒゲを船尾側に放り投げる。
思惑通りに突進してかじり付いたブルーの悪役が頭を振りながら海中に没した直後、スーッと浮き上がる平間氏の仕掛け。
サメと入れ替わるように海面に弾けたのは…
復帰戦に選んだのは富戸沖「魔性の誘惑」

11月5日は、脊柱管狭窄症の手術をしたあとの初取材。
10月に2度の「慣らし釣行」を経て、半年ぶりにカメラを携えて船上の人となる。
「復帰戦」の舞台は手術前から決めていた東伊豆富戸港の「ひろし丸」。
ターゲットはアカムツかベニアコウの二者択一。
大いに悩んだ筆者だが、最後は「魔性の誘惑」が「宝石の魅力」を上回った。
同行はチームOKAMOTOの小野寺さんと平間さん。拙取材グラビアの常連!?メンバー二人にお願いした。
ミヨシから小野寺氏、平間氏、筆者と右舷に並び、8時、富戸沖1000mに期待と不安の第一投。
着底まで15分はセオリー通りだが、若干潮が早いか普段よりもプラス100mほどのラインが出る。
3月の本誌取材以降「しばらく触っていない」ポイントでは、エキストラ達が腹を空かせて待ち構えているだろう、とタカを括っていたが…。
やや遅めながら、確実に海底の斜面を登ってゆく仕掛けに反してアプローチは遠い。
山頂部分まで流して巻き上げれば、小野寺氏と筆者にイバラヒゲが1匹ずつ。
2投目も釣況&潮況に大差なく、筆者にイバラヒゲとオニヒゲ、平間氏にイバラヒゲ。
いかにプレミアム雑魚(コラム欄参照を)と言われても、当日メンバーはいずれも魔性の紅との逢瀬を複数回叶えている「虜」達。
黒提灯ではため息が漏れるばかりだ。
例によって「ここで食いそうな気がする」と根拠なくひらめき、空バリに配す「パニックベイトアコウ」を全て鉄板カラー、橙の「メンタイ夜光」に替えた3投目。
風も北から西へと変わり、いつまで流せるかも気にかかる。
斜面を登る速度は遅くなる一方だが、着底後ややあって鈍いながらも複数のアタリ。
「目の覚める様な」本命然としたそれではないものの、やや好転かと期待も膨らむ。
ミヨシ側二人もアタリをキャッチ。次第に強まる西風をふまえ、日吉船長がやや早目に巻き上げの合図。
筆者と平間氏の「ディープオデッセイR」は時折巻き上げを滞らせる負荷に、結構なカーブを描くが、アタリがアタリだけに期待薄。
しかし、2005年2月の本誌初取材での6.3㎏のアタリはかなり「微妙」だったこともあり、(特に同乗者の釣果は)仕掛けが上がるまで「断定」は出来ない。
ヨシキリザメが仕掛けを狙っている!
残り550m。平間さんのロッドが激しく叩かれ、アブラソコムツのアプローチを知らせる。
投入時に仕掛けを止められてしまえば「一回休み」、巻き上げ時に掛かればハリ掛かりした本命を振り落す可能性があり、厄介者に変わりはない。
ミヨシから順の巻き上げだが、ここで筆者が平間氏を追い抜いて、ラスト150mに差しかかったところで「ガンガンッ!!」激しいアタリの直後にオモリの負荷が消える。
オモリと下バリを失い、浮き上がった仕掛けには2匹のイバラヒゲ。
それを追って浮上したのは、一瞬腰が引けるほど、結構なサイズのヨシキリザメ。
往路、数匹のトビウオが舞い上がるのを見て「水温がまだ高いな、上層にサメがいなければいいけど」と脳裏をよぎった不安が的中してしまう。
イバラヒゲをおとりにして…
その後も平間氏の正面辺りを徘徊し続けるブルーの悪役。
「次の仕掛け」を狙っているのは火を見るよりも明らかだ。
取り込んだイバラヒゲをハリから外し、「これでも食らえ」とばかりにトモの後方に投げ込めば、思惑通りに突進してかぶり付き、頭を振りながら紺碧の海中へと没する。
程なく平間氏が巻き上げを終え、中間部分にハリ掛かりしたアブラソコムツをリリースした直後。
スーッと幹糸が浮き上がり、少し前までサメが泳いでいた場所に、ポンッ!と弾けた深紅の大輪。
「出たーっ!!」富戸沖のど真ん中でシャウトしたのは平間氏ではなく、日吉船長。
「
急いで手繰って!!」この時ばかりはカメラは後回し。
「こんなに急いでベニを手繰ったのは初めて」と苦笑した平間氏、船内に取り込んで、やっと笑顔が弾ける。
「あそこでイバラヒゲを投げ込まなかったら、どうなっていたか判りませんね」と微苦笑した日吉船長。
チーム一丸で手にした!? 値千金の1本は右脇腹に墨を付けた5.5㎏。
自身の釣果では無かったものの、「復帰取材」成立にホッと胸を撫で下ろした次第だ。
値千金の5.5㎏!東伊豆・富戸沖のベニアコウ釣行レポート

ポイントの水深は約1000m。この水深でもベニアコウのアタリは明確に伝わる

仕掛けは胴付き8本バリ。オモリはワンダーⅠの2㎏

海面に浮上した深紅の魚体。一気にテンションが上がる!

サメに食われず無事キャッチ。値千金の1本だ

富戸沖の深海から上がってきた5.5㎏のベニアコウ。この日はこの1本だけだったが、これが見れただけでも満足だ。ベニはそれほど貴重な魚なのだ

今回、取材にご協力いただいたのは、静岡・富戸港「ひろし丸」
「出たーっ!!」釣り手の平間氏よりも先に歓喜の叫びを上げたのは、他ならぬ日吉博船長。
11月5日、富戸港「ひろし丸」が久々挑んだ1000mダチ。
流れぬ底潮にエキストラのアタリすら乏しく、2投目を終えた時点で船中釣果はイバラヒゲ少々。
ハードコンディションの中、迎えた3投目も中間地点でアブラソコムツ、上層では腰が引けるようなヨシキリザメと2段構えの襲撃に、船中四苦八苦。
ロケや取材に滅法強い日吉船長の表情にも、この日ばかりはあきらめの色がよぎったが…。
筆者がとっさの機転で放ったイバラヒゲが奏功しサメがいなくなる。
かつてサメ禍に泣いた平間氏の3年越しのリベンジを叶えた「魔性の紅」は値千金の5.5㎏!
この日も見事取材を成立させ、実力と強運を我々に見せ付ける日吉船長だった。
以上の記事は「つり丸」2016年12月15日号の掲載記事です。
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