最後の最後で本命が浮上 しかも良型2点掛け!
若船長の合図で最初にスイッチを押した桜井氏が巻き上げを終えたのは最後の最後。
スーッと浮き上がる仕掛けの先にはイバラヒゲがプカリ。
「あ~っ、なんだぁ…」声を上げた大船長だが、直後に落胆のため息は興奮と歓喜の叫びへと変わる。
初戦は底潮動かず 凪倒れに終わる

1月28日はチーム OKAMOTO3名で剣崎間口港「小やぶ丸」より、今年2度目のベニアコウ狙い。
9日の初戦は絶好の凪に恵まれたが終日底潮流れず、画に描いたような「凪倒れ」。
イバラヒゲ3匹の筆者が頭!?と撃沈。
「潮回りが大きい方が可能性大」の船長コメントに従い、再挑戦は大潮回りをセレクト。
前日は南西15m以上が吹き荒れた城ケ島西沖だが、予報通り急速に回復、無事出船と相成った。
「この時期、船が出られるところから、そのグループには運が有るんです」と常々語る鈴木知也船長。
一昨日にもラスト4投目に本命の顔を見たと言う。
この日は潮と風の向きを踏まえ、ミヨシから順に水深1000mへアプローチ。
上潮の流れが早く、水深プラス200mほどでの着底となる。
朝のうちは風が残り、ウネリも少々。
釣り易いとは言い難いが、底潮はほどよく流れる。
前回と異なりイイ感じに斜面を登って行く仕掛けに期待が膨らむが…待望のアタリは本命のそれではない。
アタリ後は糸フケが出てもそれ以上巻かずに合図まで流すのが「小やぶ流」追い食いテクニック。
15年2月の5.2㎏&5.5㎏のダブルはこのスタイルの賜物だが…この日は2信、3信共に「イバラの道」を知らしめる。
毎回そんなに上手くは行かないと苦笑しつつ、海面に浮かんだ黒提灯を手繰り寄せる。
2投目も同様の黒提灯。
3投目はミヨシの桜井氏のロッドが絞られ船中期待するも、黒提灯の下にはユメザメが揺らめき、ガッカリ。
このサメから自家精製した「深海サメ肝油」で医者から見放された病を克服、見事に現場復帰したと言う大船長が「お客さんが要らないなら肝油を作るから貰っときな!」と若船長に声を掛ける。
「この釣りは仕掛けを下ろすのも巻き上げるのも、うちでやるどの釣りより時間がかかるけれど、時間が経つのは一番早いですよ。もうラスト一投です」4投目の投入を終えて間もなく、若船長が筆者に告げる。
「一昨日も4投目でしたよ。上潮が少し弛んできたらアタった。今日もそんな潮なので、この流しに期待してますよ」。
まさにラストチャンス。
若船長の読みは的中するのか。

水深は1000m前後。アタリは意外とはっきり現れることが多い
最後の投入でアタった…気がする
海上は風、ウネリともおさまり、筆者の竿「モデルR」の竿先は千尋の底からの情報をベストコンディションで伝達する。
ややあって隣席の井口氏に明確なアタリ。
スワ、本命かと色めき立つ。
ともかくアタリを出そうと小まめに底を取り直すが、イバラヒゲのアプローチすらない。
何かがおかしい。ある不安が脳裏を過る。
着底直後からリアル「眠れる獅子」だったミヨシの桜井氏。
「目を開いた瞬間にアタった…気がする」と自信なさげ!?だが「小やぶ流」に従って仕掛けを操作、巻き上げの合図を待つ。
流す事しばし。
船長の指示でミヨシから順に巻き上げ開始。
桜井氏のロッドは結構な負荷に絞られ、リールの巻き上が滞る。これは期待出来そうだ。
胴の間の井口氏のロッドにも時折抵抗が見て取れるが、筆者はノーアプローチのまま、巻き上げの合図を聞く。
回収した仕掛けをチェックすれば、不安的中の水中灯故障。
ベニアコウに限らず、深海釣りで自身だけにアタリが出ない際、真っ先に疑うアクシデントのひとつ。
要の投入時にライトが消えていた時点で、この日筆者には「運」が無かったと言うことだ。

筆者のタックルは竿が「アルファタックル ディープオデッセイタイプR」、リールは「ミヤエポック コマンドZ9」
紺碧の海面を割り 深紅の大輪が弾ける
続いて上がった井口氏の仕掛けにも魚の姿はなく、こちらは水中灯が食い切られている。
残るは桜井氏。
最初に浮かんだのはイバラヒゲ、サメに齧られた2匹目を見た大船長だったが次の瞬間…。
「オラーッ、いるぞ!赤い、赤い!!」と歓喜の叫びを上げる。
紺碧の海面を割ってまず一花、続いてもう一花。
船中全員が深紅の大輪が弾けるクライマックスシーンを堪能する。
5.5㎏と5.6㎏はいずれもニッコー化成「スーパータコベイト6inchケイムラ」+スルメイカタンザクへのアプローチだった。
年明けのリベンジを見事に果たす「両手に華」に破顔一笑の桜井氏をカメラに収めて大団円。
再挑戦での取材成立にホッと胸を撫で下ろす筆者だった。
究極の深海ターゲット!ダブルで浮上!ベニアコウ釣行レポート

スルメイカの不漁で、エサ代もばかにならない。生エサの代わりにワームエサを使うのも面白いぞ

最後の一流しでようやくヒット!長い長い巻上げののち、海面に浮上したのは2匹のベニアコウだった

海面に姿を見せた本命ベニアコウ。慎重に手繰り寄せ1匹目をキャッチ

そして2匹目も船内に。1日釣って船中1匹も釣れないことも十分にありえるが、1投で2匹!そんなこともあるのがこの釣りのダイゴミでもある

幻の深海魚とも呼ばれる貴重な魚、ベニアコウの2点掛け!5.5㎏と5.6㎏、アワセて10㎏オーバーだ!

脂が乗って旨味たっぷり。刺身、鍋ネタ、煮ても焼いても美味しい魚。しかもこのサイズは食べ応え十分

この日本命を手にできたのはひとりだけだったが、日によっては複数人が数匹ずつキャッチできることもある

今回、取材にご協力いただいたのは、神奈川・剣崎間口港「小やぶ丸」
この日は剣崎間口港「小やぶ丸」より、今年2度目のベニアコウ狙い。
前回の初戦は絶好の凪に恵まれたが終日底潮流れず、「凪倒れ」に終わっていた。
しかしこの日は…。
「居眠りしてた人に来ちゃいましたよ」苦笑する鈴木知也船長。
「殺気が消えてたのが良かったんじゃない?」と笑い返す筆者。
脳裏に「2タテ」が過ったラスト4投目。
9回裏ツーアウトからサヨナラホームランを放った桜井氏に手荒い!?祝福を贈る船内。
5.5㎏&5.6㎏。深紅の大輪を連ねた本人はもちろん、同乗者、船長、誰もが幸せに満ちた微笑みを湛える至福の瞬間。
逢瀬を願う者全てを虜にするその魅力こそ、究極の深海ターゲット「魔性の紅」ことベニアコウの真骨頂。
「小やぶ丸」での釣期は例年通り3月いっぱいまで。
ラストチャンスに賭けるのも一興だ。
以上の記事は「つり丸」2017年3月1日号の掲載記事です。
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