深海の攻略法が進化。一般アングラーでも十分に挑戦可能

アブラボウズという名の魚をご存知だろうか?
ギンダラ科アブラボウズ属の深海魚で、100㎏クラスにもなるモンスターだ。
深海魚特有の少し柔らかめの肉質ながら、上品な白身は食べても上々。
近年、じわじわと注目を集めつつあるターゲットだ。
静岡県の南伊豆沖では、以前から冬場のエサ釣り対象魚として親しまれてきた。
ポイントの水深は500m〜800m。
ときにはそれ以上を攻めることもある。
エサ釣りではキンメやアコウ用のタックルを流用して攻略していたが、ルアーマンには縁遠い存在であった。
しかし、近年のスロー系ジギングの盛り上がりとともに、中深海や深海への攻略法が進化。
一般アングラーでも十分に挑戦できるターゲットになってきた。
南伊豆・弓ヶ浜の「恵丸」でも、釣り人の要望に応える形でアブラボウズ狙いに出船している。
「まだそんなに人は集まらないけど、好きな人は好きなんだよね」と良川福一船長。
乗合ではエサ釣りと同船となることもあるが、エサとルアー、打率は五分五分というから興味深い。
2017年に入ってからの釣行でも、ほぼ出船ごとに釣果を記録している。
40〜60㎏クラスが中心だが、これまでの実績では100㎏近いサイズもキャッチされている。
30〜40㎏は小型の部類。
100㎏オーバーも夢ではない、近海のビッグゲームなのだ。
水深500〜800 mのポイント ジグウエイトは900g前後

ヒットジグはイナムラルアーの陽炎850g。大滝さんが自作するオリジナルジグで、いくつかのショップで入手できる
まだまだ進化中の釣りなので、専用タックルがあるわけではない。
しかし、流用とはいえ一般的な近海道具では役立たず、となることが多い。
挑戦したい!という方は、まずタックルを揃えることがスタートとなる。
考慮したいのが500〜800mを目安としたポイントの水深だ。
これに対応するため、ジグのウエイトは900g前後を中心となる。
入手できるジグの種類は限られているが、ディープライナーやシーフロアコントロールといったスロー系ジギングに注力している
メーカー各社から販売されているので、これを利用するとよい。
取材時に見事アブラボウズをキャッチした大滝雄博さんがハンドメイドで作っている「イナムラルアー」というブランドでも、陽炎というジグをリリースしている。
フックは大型のシングルフックを前後に装着するのが主流だ。
ロッドは5ft前後のベイトロッドを選択する。
コレと挙げるのは難しいが、使用ジグの最大ウエイトが200〜300g程度のものから選ぶとよい。
長いロッドのほうが海底付近でのジグ演出にバエーションをつけやすいが、シャクリ動作はキツくなる。
一長一短なので、最後は好みの問題になるだろう。
リールは使用ライン3〜4号を1200m程度巻き込むことができる大型ベイトリールをセレクトする。
選択肢が少なく、廃盤となっているため中古やオークションでしか入手ができないものも多いが、オシアジガーの5000番やマーフィックスなどに人気がある。
ラインは3〜4号の単線構造のファイヤーラインを1200m、というのが定番。
通常のPEラインは編み糸ならではの伸びがあるため、深海の釣りでは感度に乏しくなってしまう。
結果、ジグの演出がうまくできないばかりか、根掛かり頻発の要因となってしまう。
ライン選択はこの釣りの最重要事項と考えてよい。
軽視すると釣り自体が成立しなくなるので、くれぐれもご注意を。
リーダーはフロロカーボンの22〜30号を3m程度結節しておけば十分だろう。
相手は50〜60㎏クラスもザラにいる巨大魚。
負荷の掛かった状態での長時間ファイトに耐えうるよう、ラインシステムは万全にしておくことが必須だ。

少々専門的なタックルが必要だ。とりわけラインは1000m以上のストックが必要
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リールはPE3号を1000m収納できるハイギアのベイトタイプを活用
まだまだ発展途上の釣り。ボ トム周辺のスロー系ジギング
まだまだ発展途上の釣りだけに、こうすると釣れるというものは存在しない。
取材時に40㎏クラスを仕留めた大滝さんは、昨年も65㎏を釣っているが、まだまだ分からないことだらけ、という。
「回収がちょっと遅れてモタモタしてたらゴンッと来たんですよ」というのが今回のヒットパターン。
それでも4回釣行で2本のキャッチは、なかなかの確率だ。
ちなみに同船していた仲間の3人は、乗船回数に差こそあれ、いまだキャッチまで至っていない。
みな手探りで楽しんでいるのが現状だ。
ただ、基本はボトム周辺を意識したスロー系ジギングの釣りと考えてよい。
つまりジャークしてアピール、フォールで食わせるというアクションで探るパターンだ。
釣り方が確立されていないターゲットは、いまや希少種だろう。
開拓精神豊かなアングラーにぜひ挑戦をおすすめしたい。
「恵丸」では3月まで出船予定だ。

海底周辺でのロングジャーク&フォールがメインパターン!?と信じて操る
水深600m以上!深海ジギング アブラボウズ釣行レポート

新エンジンを載せた「恵丸」は弓ヶ浜から出船中!!

着底まで10分以上。現在のところジギングゲームでは最深の釣りだ

ラインが足下に入ると回収がひと苦労だ

モンスターとやり取り中!!

ギャフが掛かればひと安心。ロングファイトで腕はパンパン

仲間が集まり記念撮影。港で計量して40kgちょっと。釣り人は鎌倉市の大滝さん。誰かが一本釣れば大いに盛り上がる
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ポイントの水深は500m〜800m。

ひとりじゃ上がらないよ、手伝って!と船長。ランディングは大捕り物だ

苦節3年。10回を超える挑戦で仕留めた岐阜市の安藤さん。54㎏の立派な一本に「本当にうれしいです」と感無量

まだ、発展途上の釣りだけにモンスターをキャッチしたときの喜びはひとしおだ

アングラーを落胆させるバラムツは定番ゲストだ

ゲストも見慣れない。これはトウジン。多少は流通している美味魚だ

今回、取材にご協力いただいたのは、静岡・弓ヶ浜「恵丸」
「アブラボウズ狙いのポイントはアコウとだいたい一緒。場所はいっぱいあるよ」言葉の主は弓ヶ浜「恵丸」の良川福一船長。
アブラボウズは決してポピュラーなターゲットとは言い難い。
釣り場、出船する船ともに限られている。
しかも、ポイントの水深は深い。
南伊豆沖では500〜800mがひとまずの目安だ。
「1000mで釣ったこともあるよ」とは良川船長。
しかし、100㎏も現実的なモンスターだ。
挑戦しがいのある相手であることは間違いない。
1月下旬。早朝、4時半に集合した5人の釣り人に合流、「恵丸」に同船した。
凪ぎに恵まれた取材日。
投じられた900g前後のジグはすんなりと着底。
4人のルアーマンたちは思い思いのジャークを繰り返した。
10回ほど挑戦しているが、いまだ姿見ず、というエサ釣りの方は、スルメイカの一本掛けだ。
次第に二枚潮がキツくなってきた。
オマツリはもちろん恐怖の根掛かりも出始めた。
そんななか、一本目を仕留めたのはエサ釣り師。
浮上した巨体に歓声があがる。
最後の投入でルアーマンも一矢を報いた。
30分以上のファイトの末、ボコンと上がったのは、これもデカい本命!
一本仕留めることが出来れば、大宴会を開催できるビッグサイズ!
深海のロマン溢れるアブラボウズ釣り。
挑戦を考えてはいかがだろうか?
以上の記事は「つり丸」2017年3月1日号の掲載記事です。
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集合は午前4時半。暗闇のなかでの準備となる