秋のテンヤタックルは大ダイ&青物も視野に


秋のマダイは水温が落ち着き、越冬前の荒食いを始めるため脂が乗ってくる。
この時期のマダイは産卵期に続いて2度目の旬を迎え「紅葉ダイ」と呼ぶこともある。
テンヤは元来、ビシマ糸や中オモリを使ったシャクリ釣りで使われていた漁具だ。
極細PEラインの登場がテンヤ単体で釣りが成立するようになり、ライトタックルでマダイ釣りが楽しめる。
ひとつテンヤマダイは、”つり丸”提携の船宿では東北〜日本海、茨城〜房総半島の船宿から出船している。
1日船の他、港によっては午前船、午後船と2便態勢で出るところもある。
2便態勢の場合、釣り人の都合や魚の釣れ具合でどちらに乗るか選択できるが、体力に余裕があれば通しで乗る手もある。
10月は秋ダイシーズンの真っ最中だが、その前にひとつテンヤの基本を押さえたうえで、いかに楽しむかを提案したい。
今回取材した鹿島旧港「義心丸」では、1〜2月のヒラメシーズン以外は2便態勢でひとつテンヤマダイに出船している。
「今はハナダイがポツポツアタり、朝や夕まずめに良型のマダイがまじります」と、「義心丸」の中澤誠船長。
タイミングによってはハナダイが連発し、他にも青物、根魚、ヒラメやホウボウなどゲストも多彩なのでお土産には困らない。
まずタックルだが、竿は各社から発売されているひとつテンヤ専用竿を使いたい。
専用竿は穂先が繊細で、軽いテンヤの着底や、小さなアタリを捉える。
その一方、マダイの硬い口にテンヤバリを貫通させたり、大ダイや青物の強烈な引きに耐えるだけの強度を兼ね備えている。
長さは2.1〜2.7mだが、最初の1本なら2.4m前後が無難。
テンヤを操作する際、竿のストロークも重要になってくるので、短い竿は2本目以降に選びたい。
リールはドラグ性能の優れた小型スピニングリール。
細いPEラインで手のひらサイズの小ダイから、時に5㎏、10㎏の大ダイまで相手にするため、安物では不安が残る。
有名メーカーで、ある程度の価格がするものを選ぶこと。
リールは機械なので価格が性能に比例する。
今はPEの使用を前提にしたシャロースプールも多く、ハイギアもお勧め。ひとつテンヤ専用のリールも市販されている。
磯釣りをやる人ならLB(レバーブレーキ)タイプのリールでもOK。
道糸はPE0.8号。
0.6号は潮切れが良く、テンヤを速く沈められるが、寿命や障害物に触れたり、オマツリ時の耐久性も短くなる。
そのリスクを頭に入れたうえで判断したい。
リールには最低でも150mは巻こう。
ハリスは高品質のフロロカーボン2〜3号。
コマセマダイよりも細いハリスなので、強度の高いものを使いたい。
長さは3〜5m。2m程度になっても問題ない。
ハリスの太さ自体は3号でも食いは変わらないが、根掛かり時にラインシステムから切れることを避けるため、2号を使う考え方と、大ダイや青物が出ているなら3号で確実に取り込むという考え方もある。
ラインシステムはPRノットやノーネームノットなど「摩擦系」の結び方が基本。
ノット用の器具を使うか、PEを大型のスナップスイベルなどに結び、ハリスに巻き付けていくのもアリ。
ドラグ設定は1㎏程度だが、緩すぎるとバラシにつながり、締め過ぎるとハリス切れする。船長に見てもらうのも良い。
テンヤは重めも用意 エサは冷凍または生きエビ

テンヤは鹿島沖では5〜10号前後が主に使われる。
固定式、遊動式の2種類がある。速く沈めたいときはカブラ型が有効。
テンヤも様々なカラーバリエーションがあるが、エサ取りが多い時は地味なテンヤを使い、逆の時は目立つテンヤでいち速くマダイの目に止めるのも手だ。
あらかじめ船長に何号のテンヤを使うか確認し、よく使う号数なら2個ずつ用意しよう。
テンヤは最低限7〜8個くらいは用意しよう。
テンヤは着底の感覚が分かることが前提なので、慣れないうちはやや重めのテンヤを使いたい。
鹿島港の釣具店では「一番売れるテンヤは8号」とのことだ。
「軽いとフォールのアタリも分かりやすいけど、軽ければ軽いほど良いとは限らない。
潮に合わせること」と船長は言う。
なお、二枚潮で上潮が速く流れる時などは、12号や15号のテンヤを使うこともあるという。
ハリスとテンヤを結ぶ時、根掛かり時にラインシステムを残したいならユニノット。
大ダイ狙いなど強度最優先の場合はダブルクリンチノット。
筆者がフィッシングショーなどでノットの強度テストをする時の結び方だ。
本線に6〜7回巻き付けるのがコツ。
エサは鹿島では4〜6月、および10月からは底曳網で獲った生きエビを使えるが、水温20度以下でないと生きたまま保管できない。
他の時期はサルエビなどの冷凍エビを使うことになる。
冷凍エビはやや頭が取れやすい。
使う分以外はクーラーで保管し、鮮度の低下を最低限に抑えたい。
エビは鮮度が落ちると頭が黒く変色し、やがて頭がもげる。そんなエビにはまずマダイは食わない。
エサは尾羽を切り(最初の長い関節は残す)孫バリでしっかり胴体と頭を縫い、親バリはエビが真っすぐになるよう付ける。
もし小さいエビがいれば2匹掛けもOK。
「魚がアタッてから頭が取れるなら大丈夫だけど、その前に頭が取れるエビは(不自然に見えるのか)アタリが少ない」と船長。

テンヤは10号や12号といった重めのものも用意しよう

取材当日は冷凍エビを使用。時期によっては生きエビを使うことも
底付近のほか 上のタナも探ろう

大原や鹿島ではエンジンを停め、潮の流れ方によってはパラシュートアンカーを使って根の周りを流して探る。
釣り方は、動かして食う時、止めて食う時とある。
現在の水深は20〜30m台が多いので、合図とともにアンダーハンドで軽く投げ、人差し指をスプールに当てて軽くサミングしながら落とす。
完全フリーで道糸を出すと、道糸が潮に流され、水深以上に長く出てしまい、根掛かりの危険が増える。
磯からクロダイやメジナを狙うウキフカセ釣りのイメージだ。
船の向きによって、船下へ道糸が入ってしまうような時は、テンヤの号数を上げて対処する。
マダイは落ちてくるエサに反応するため、着底前に道糸が止まったり、急に走ることもあるが、その時は即座にアワせる。
反応が底より上に出ているなら、着底したら数秒待ち、軽くシャクって50㎝刻みで底から5m、時に10mくらいまで探り、テンヤの沈下に合わせ、竿を下げながら落とし込む。
この時にアタることも多いので要注意だ。
水温が下がったり、冬にかけては底でアタることもある。その時はベタ底〜底から50㎝くらいの範囲でアタリを待つ。
小さなアタリも 積極的にアワせよう
「磯(根)のきつい所は置きっ放しだとベラにやられる」と船長は言う。
根の周りをエビエサで攻めるため、本命のマダイ以外にもゲストやエサ取りのアタリは多い。
油断しているとあっという間にエサが取られてしまうので、マメに回収し、エサの付いていない時間を極力減らすことが大切だ。
とくに初心者はテンヤを長く海中に入れたままにする傾向があるため、手返しの速さが釣果につながると考えよう。
小さなアタリでもしっかりアワせ、ベラやフグでもハリに掛けていくことが大切だ。
テンヤのハリは大きいが、20㎝級でもハリ掛かりする。
また、フグが多い時は孫バリを結んだハリスが痛みやすい。
予備にマダイバリや丸海津の12〜14号とフロロカーボンの4〜6号を用意しておくとよい。
テンヤの親バリでなく孫バリだけに掛かることも多いため、細かいようだが要注意だ。
瀬戸内ではマダイを一枚釣るたびに孫バリを交換する人もいるという。
もちろん、親バリも先が鈍ったら研ぐか交換だ。
アタリが来たら、マダイの硬い口に大きなテンヤバリを貫通させるため強めにアワせる。
アワセが弱いと途中でバレやすい。ドラグが滑るなら押さえてアワせよう。
掛かったらマダイは潮上に走る。ドラグ調整を信じて一定のテンションでやり取りする。
緩むとテンヤの自重でバレるのでポンピングはNG。
大型が食ったら走る時は走らせ、止まったら巻き寄せる。
マダイは青物ほど持久力はないので、何度か走らせれば徐々に弱る。
そのタイミングで寄せれば良い。
小型は抜き上げるが、1㎏を超えるようなら必ずタモですくってもらおう。
タイラバやタイジグも 試してみよう!

ひとつテンヤの船では、タイラバやタイジグ(マダイに特化した小型メタルジグ)を使える場合も多い。
これらの「巻きもの」は状況によりテンヤよりアタることもあるため、できれば用意したい。
タイラバのタックルはタイラバ専用竿かLTゲーム用ロッド。
リールはドラグ性能の良い小型両軸リール(一定の速度で巻くため、小型電動を使う人もいる)にPE0.8〜1号程度。
ハリスはヘッドの中を通すため、3〜5号とテンヤより太めが良い。
タイラバは底から10m程度まで一定の速度で巻いて探る。
ネクタイやラバースカートがピロピロ揺れて魚を誘う。
早アワセは厳禁。
ゴツゴツとアタリが来てもそのまま巻き続け、重みが乗ってからアワせることだ。
タイジグの場合はひとつテンヤのタックルと兼用できるが、今話題のSLJ(スーパーライトジギング)のタックルもOKだ。
今後も青物がヒットする可能性も高いので、リーダーは3〜4号はあった方が良いだろう。ジグの重さは30〜60g。
ゴールド、シルバー系が使われる。
タイジグは底から10mまでをただ巻きに加え、スロー気味のジャークやフォールも有効。
どの動きが効くかはその日の状況次第。
マダイも大きくなるほど魚食性が強くなり、イワシがいる時も期待できる。
常連さんによれば「テンヤやタイラバで食わないけど、ジグならアタる時がある」というので、ジグも数本は用意したい。
「最近は30gくらいのジグにアタッているよ」と船長。
こちらはハードルアーなので、アタリがあったら即アワセだ。
3通りの釣り方を紹介したが、状況を見ながら対応していくことが釣果を伸ばすコツだ。

ジグやタイラバを試すのもOK
秋の好シーズン突入!鹿島沖テンヤマダイ釣行レポート

釣り場は鹿島沖の20〜30m台

強い引きは良型だ!

このぐらいのサイズは数釣れることもある

午後船でもきれいな良型が取り込まれた

朝のチャンスタイムにジグにヒットした2.5kg

こちらはハナダイ

ハナダイは定番ゲスト

浮上したのはワラサ

秋はワラサ、イナダなどの青物もよく掛かる

マゴチも掛かった

ヒラメもヒット

ショウサイフグは良型主体

近年鹿島沖でもよく見られるようになったマハタ

今回、取材にご協力いただいたのは、茨城・鹿島「義心丸」
鹿島沖のひとつテンヤマダイは、手堅い釣果が続いている。
「ハナダイがポツポツ釣れていますが、その中で型の良いマダイがまじることが多いです。
テンヤは5号から10号を中心に持って来てください。
テンヤは底から5mまで、タイラバやジグなら底から10mまで探ってみましょう」と、鹿島旧港「義心丸」の中澤誠船長は言う。
実際に潮が緩いと5号のテンヤでも底が取れたが、潮が流れ出すと8号テンヤが使いやすい。
主な釣り場は鹿島沖の20〜30m台。
時には15m台の浅場を攻めることも。
まだ気温が高いので、エサのエビが冷凍の場合は、クーラーで保冷しながら使いたい。
エサ取りはベラが多いが、マゴチやヒラメ、ホウボウ、マハタ、ショウサイフグ、カサゴやメバルとゲストは多彩。
イナダ、ワラサも多い。
油断しているとエサがすっかりなくなることもあるので、小さなアタリでもしっかりアワせよう。
取材当日は朝方にジグで2.5kgがヒットし、その後はゲストが多かったものの、午後船ではテンヤ、タイラバ、ジグといずれの釣り方でもマダイが食ってきた。
10月に入ると水温も落ち着き始める見込みだが、2〜3kg以上の良型も期待できる。
秋は鹿島沖のマダイをぜひ仕留めたい。
以上の記事は「つり丸」2019年10月15日号の掲載記事です
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