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釣る前に、食べる前に、モロという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、モロという魚を知ろう!

モロは、スズキ目アジ科ムロアジ属の魚。ムロアジ属の中では体高が低く、細長い。稜鱗は側線直走部の4分の3をおおうが、稜鱗は小さく、あまり目立たない。生鮮時、体側に黄色の縦帯が1本ある。背鰭前方鱗域は眼の中央付近に達しない。全長30cmを超える。

モロ(スズキ目アジ科ムロアジ属)の生態

主に千葉県〜九州南岸の太平洋、山口県の日本海側から九州西岸の東シナ海に多い。ただし宮城県でも希にまとまってとれることがあり、当地では「温暖化」のせいではないか、と思っているよう。
さて、「もろ」もしくは「むろ」は漢字で「諸」、それとも紀伊半島の地名「牟婁(むろ)」なのか、気になって仕方がない。「もろ(むろ)」は「室津」からきた言葉で、現在の兵庫県たつの市室津でムロアジ類がたくさんとれたため、とする書籍もあるがこれは間違いである。ムロアジ類に「諸」を当てると「たくさんとれる魚」になり、「牟婁」を当てると「紀伊半島の海辺からくる魚」になる。モロはこのムロアジ類の中でも水っぽいと思われていたのか紀伊半島で「みずむろ」と呼ばれていた。

モロの値段は?

流通上で見かけることはほとんどない。長い間市場を歩いているが、他の魚に混ざって入荷したことはあるが、モロだけで入荷したのは見ていない。外房などでは干もの原料として取引されているため単位が大きく、ただということはないかも知れないが、1キロあたりの値段はわからない、というのが正しい。つまり、鮮魚は、釣り人か産地の方のみ味わえる魚なのである。

「モロ」の寿司…青魚特有の程よい酸味と皮の風味、そして後味が良い

十月になったのに、台風がいくつも発生して、海は大荒れ。どこにも行けないので気がふさぐ。そのせいか、毎日のように『市場寿司』に寄り、大いにぐちをこぼしている。

そんなとき、たかさんが「ほい!」と目の前に置いた一かん。これがアジ科まではわかるが、種まではたどれない、背の青い魚のあぶり。

「なに、これ?」

「だまって食べな」

「ボクはね、魚の種類がわからないと食べられないの」

「もう下ろしちゃったから、わからない。Iが相模湾で釣った魚だよ」

「頭残ってないの?」

ゴミ箱から出てきた頭を見ると、モロであった。ムロアジ類は頭さえあれば種がわかる。このところ、Iは相模湾にライトタックル五目で通っている。というか、まったくの初心者なのでライトタックル五目しかやったことがないらしい。

「モロか、Iに教えてやらなきゃ」

さて、この釣りたてのモロのあぶりがいい味だった。どのように表現したらいいのだろう。一かんの味としては軽い。あまりインパクトは強くないが、背の青い魚特有のほどよい酸味と皮の風味、そして後味のよさ。江戸前握りで「こはだ」をお願いするように、モロを握ってもらうというのも悪くない。

考えてみるとムロアジは和歌山県や三重県の名物にもなっていて、秋が深まると送ってもらっている。そのうまさは超弩級である。が、モロをじっくり味わったことがない。

モロは初夏のイサキ釣りにもくるし、ウイリーにもくる。猛烈釣り師だった頃にさんざん釣っているはずなのに、味の記憶がほとんどない。どうしてだろう? たぶん、ボクが釣り師としてすれっからしになっていたせいだ。初心者であるIのように「何が釣れても楽しい」。そんな気持ちを忘れていたようだ。

秋が足踏み状態で、なかなか深まらない。ラジオから「観測史上最短の秋になりそう」などと気象予報士が話している。

体育の日を過ぎて数日後、台風一過の沼津に行く。定置網の水揚げを見ていると、アジやイナダ、カマスにまじってムロアジやモロが見えるが、扱いがひどく荒っぽい。

「これ捨てるんですか?」

「違うだ、帰って干ものにするだらね。欲しかったら持って帰れ」

喜んでバケツいっぱいいただいてきた。十本ほど『市場寿司』に置き、残りは開き干しにする。

『市場寿司』で、遅いお昼ご飯に食べたモロのあぶりがうまい。酢とみりんを合わせたものに、くぐらせて握ったのもよかった。

「いくらした」と聞くので「漁師さんにいただいた」というと、

「沼津のすし屋さん、うらやましい。こんないいネタがただ。いいな〜」

翌日は酢でしめたのを食べた。これも絶品だった。昼下がり、店じまいしてのビールにモロの開き干し。

たかさん曰く、

「六十年生きてきて、よかった」

Iが通りかかったので、「今週も釣りかい?」と声をかける。

「そろそろエルティー卒業します」

「エルティーじゃなくてライトタックルだろ」

「なんすか、それ?」

まだ二十歳代にしても、物を知らないにもほどがある。

「Lはライトの略、Tはタックルのこと。要するに軽い道具で釣るってこと。そうすると魚とのやりとりもおもしろいだろ」

横で聞いていた、たかさん、

「ライトは明るいじゃないの」

「ライトには明るいという意味と、軽いという意味、両方あるの」

「おれもライトだ!」

「そうだね」

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2013年11月15日号の掲載情報です。

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