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釣る前に、食べる前に、ヒゲダイという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、ヒゲダイという魚を知ろう!

ヒゲダイは、スズキ目イサキ科ヒゲダイ属の魚。沿岸域の岩礁域や砂底に生息する。幼魚は枯葉や枯枝などに紛れて海底を漂うように泳ぐ姿が観察されており、枯葉に模倣している可能性もある。福島県・山形県~九州南岸、瀬戸内海、小笠原諸島に分布。

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ヒゲダイ(スズキ目イサキ科ヒゲダイ属)の生態

山形県・福島県~九州の日本海、東シナ海、太平洋沿岸。太平洋沿岸に多い。
1955年に出た田中茂穂の『図説有用魚類千種 正』に載っているヒゲダイの図はなぜかヒゲソリダイになっている。古くヒゲダイとヒゲソリダイは混同されていた。それで研究がすすんで、本種は2005年に新種記載された。そのせいか「とももり(たぶん平知盛にちなむ)」という呼び名は両種ともに使われている。「鍋割」というのもある。これは明らかに「うますぎて鍋の底に残ったものまでかきとって食べた」、それで「鍋割(鍋壊しと同じ意味)」となったはず。本種はそれほどに味がいい。
標準和名のヒゲダイは下あごに髭状のふさがあるため。同じく下あごにふさ状の髭があるが、ヒゲソリダイには少ない。このあたり標準和名としておかしみを感じる。

生息域はまだはっきりわかっていない。熱帯域では見つかっていないなど謎が多い。

現状では、福島県から九州南岸の太平洋沿岸、少ないながら山形県から熊本県までの日本海沿岸域にも棲息している。

古くは相模湾や外房にはほとんど見られなかった。ある意味珍魚だったが近年やたらに増えている。
 
本種とヒゲソリダイという同じ科同じ属の魚は見慣れないと見わけがつきにくいらしい。

ときどき「鬚の生えている黒い魚だからヒゲダイだよね」と問い合わせが来ると、かなりの確立でヒゲソリダイだったりする。

これは明治大正生まれの魚類学の大家でも同様であったらしい。

この髭を剃るか、生やしたままか、の違いが国際的に解決できたのはなんと2005年のことである。

小種名は「sennin」で仙人のことだ。

ヒゲダイの値段は?

実に漁獲量の少ない魚。定置網で、たまにとれても一日にぽつんと1~2匹くらいである。残念ながら築地場内などにもめったに来ない魚なので一定の評価はない。今回の握りに使った1㎏弱で卸値キロあたり2000円。大きいもので卸値キロあたり3000円くらいだ。1尾1キロで2000円ほど。まずまずの高級魚ではある。

キロ4000円以上する高級魚だ!

昔、築地などの市場ではめったに見かけることのない魚で、見た目のごっつさから安かった。

これが近年、超がつくほどの人気者なのである。非常に高くなってもいる。

1㎏あたり高いと卸値4000円以上はする。

今回の2㎏の個体は、名人が活け締めにしたものなので、1㎏あたり卸値5000円前後、1尾卸値10000円くらいはする。

釣れたら大切にお持ち帰りを。

「ヒゲダイ」の寿司①…この白いのが総て脂の粒子か? と思う程の甘味

台風が来たり、火山の噴火があったり、今年は自然災害が多い。そのせいだろうか? 水揚げが好調なのはサンマだけ。その他の魚種の市場への入荷が少ない。ついでに言わせてもらえば、ご近所の釣り人の皆さんの釣行回数も少ないようだ。

早く天候が安定するといい、そうぼんやり考えていたら、そのご近所の釣り人のひとりが、『市場寿司』にいたボクを呼びに来た。

「初めて見る真っ黒な魚がいるんだけど、なんでしょうね」

押っ取り刀で市場の魚屋に行くと、確かに真っ黒な物体が水槽でゆらゆら泳いでいた。「すくってよ」と言うと、「へい、お買い上げー!」。

まな板の上でばたばたしているのを見ると、ヒゲダイであった。

「どうしてヒゲダイなの?」

人気絶頂の高尾山そばのすし屋さんが不思議そうに聞いてくる。説明すると下あごの髭を触って、

「本当だ。髭がある」

「よく似た魚にヒゲソリダイっていうのがあるんですが、そっちは髭が短いんです。このヒゲダイ、ヒゲソリダイは超うまいんですよね」

三キロ、四キロになる魚なので重さ一キロ弱は「まだ子供ですね」。

「子供のくせに偉そうだ」

持ち帰ると、たかさんが、あっという間に下し、刺身にして味見。

「ああ、うまーい!」

釣り人さんも大感激。

「釣れるかな?」

と聞くので、あまり釣れたという話は聞いたことがないが、イサキの仲間なのでオキアミや身エサで釣れるはず、などと説明した。

「これは千葉県産だから、外房で浅場のイサキ釣りとかやると、まじる可能性大いにありでしょう。がんばって釣ってきてください」

握りで食べても、実に上等であった。血合いが赤くなく薄紅。全体にやや白っぽい。が、この白いのが総て脂の粒子ではないか? と思えるほどに脂の甘味が感じられる。しめた直後なので、すし飯との馴染みがイマイチなのだけが残念だ。

「たかさーん、明後日くるから、半身残しといてね」

そのまま九段に出たら、千鳥ヶ淵の石垣にススキの白い穂がゆらゆら風に揺れている。「秋だな」などとしみじみ感じて、ため息が出る。

夕方に行ったすし屋さんで三陸産メバチマグロをつまんで大感激。白身の千葉県産ソゲ(ヒラメの一キロ以下)に感動。兵庫県明石産のマダイにうっとりして声をなくす。

さて、明後日といった当日の朝。予定通り『市場寿司』のカウンターでヒゲダイの握りをつまむ。座ると同時に出てきたのが、三かん。ひとつめつまんで、舌にうま味がじわりと広がる。しめた日よりも格段にうまい。これは「三陸のメバチマグロなんか目じゃない」。二かんめはスダチ塩で口に放り込む。こうなると言語を失って、なにも言えなくなる。

たかさんが端っこにいる母娘連れに、ヒゲダイの写真を見せて、いろいろ説明している。「やけに親切だな」と母娘を見て納得。

母は大原麗子似、娘はAKBに入れても大丈夫、というくらい可愛い。

「白身でうまいんです」と出して、母娘ともども「おいしいわ、おいしいわ」と感激の声を上げている。

これでやめとけばいいのに、

「ドウビドウバー」

母娘が「しーん」と困り顔になる。当たり前だ。ここで「パパ」と「パヤー」とか返ってくると思うなよ、母親だって三十代らしいのだから。

ボクはかねがね、ヒゲダイの顔は左卜伝に似ていると思っていた。でも、たかさんに教えたことはない。と言うことは、ヒゲダイの顔は間違いなく左卜伝似なのだ。

「昭和は遠くなりにけり、だ」

「ヒゲダイ」の寿司➁…ヒゲ面に似合わぬおいしさ!

ある昼下がり、煉瓦色のはっぴを着た、たかさんがまな板の魚を見て、「クマさんがね、これなら一万円以上するって言ってたけど、変な顔した魚だよねー。時代は変わるね」

「コロナがなかったらもっとする。必殺仕立て人がしめたからね」
 
市場の釣り名人、クマゴロウの店は高級魚をメインに扱っている。

この黒い変顔の魚の、値が急上昇していることに驚いているのだ。
 
この魚のことでいえば、長年、磯釣りの魚で、船釣りでは釣れないのだとばかり思っていたのだ。

数年前のこと。故郷徳島県に、阿南という磯釣りで有名な町がある。

熱血磯釣り師の幼なじみが磯渡しのある港から、何を思ったのか、その日は珍しく船釣りに出た。

港前の浅場で最初にきたのが、黒い変顔の魚だったのだ。

磯釣り師の我が友は「チヌにしては顔が変じゃのー」と思ったらしい。
 
そして今回、二月はじめの雪の朝、可愛い女子ならぬ大分県の友人から銘菓と清酒、魚が送られて来た。

その魚というのが、今回の主役だったのだ。

しかも二キロほどの大物である。常温の宅配便だったのに、乗せてあった保冷剤はまだ凍っていた。

その上、その真っ黒な魚は、死後硬直前でやわやわしていたのだ。
 
昨年暮れの、ちょっとしたアドバイスの礼にしてはゴージャスなものばかり。

まるで藁しべ長者のようだと、お礼のケータイをいれた。

「大物をありがとう」

「いえいえ、あれは小さい方です。三キロ、四キロが普通ですけん」
 
豊後水道の、水深三十メートルの砂地と岩場が混ざるところで釣れたもの。

真冬にはシロギスやヒラメが同じ場所で釣れるという。
 
真っ黒な変顔の魚、ヒゲダイは今や相模湾でも普通にみられる。

定置網には三十、四十尾と入る。高い魚なので漁師さん大喜びの獲物だ。

ただ、相模湾の船釣りにもくるのだろうか? 茅ヶ崎などのキス釣りに来てもおかしくはないはずだが。
 
たかさんがまな板上のヒゲダイを見て、「時代は変わるね」と行ったのは釣り上げてから中一日経っているのに死後硬直させない、活け締めの達人の存在に対してでもあるし、昔はこんな奇妙な魚はとれなかった、という意味でもある。
 
釣り上げて中一日で下ろしてはみたものの、味見すると、やたらに硬くて、味も素っ気もなかった。

「これじゃ、薄く切ってもダメだ」

「よくなったら教えて」
 
さてそれから、二日後に連絡がきた。腹が減っていたので押っ取り刀で駆けつけた。

カウンターに座った途端、刺身が出て来た。

「これヒラメより数倍上だよ。うちが高級すし屋だったら五万出す」
 
お茶で口をすすいで一切れ舌に乗せると、官能的な味わいが舌に覆い被さってくる。

しかも脂がとてものっているのがわかる。

「とりあえずはこんくらいかな」
 
いきなり五かんは、一分で喉を通り過ぎた。

しかも一かん、一かん、ボクに衝撃を与えながら。

「たかさん、今回送ってくれた人は必殺仕立て人だって話したよね」

「驚いたよ。身が硬直してなかったもんね。こんなの初めてだよ」
 
今、九州では独特の活け締め法が釣り人の間にも広まりつつある。

即死させて神経を抜き、余分な血液を徹底的に抜いてしまうのだ。
 
味のピークもなんのその、あっと言う間に二キロを食べ尽くす。

「たかさん、顔の悪い魚ほどうまいって、昔から言われているよね」


「こいつ、顔は悪くないんじゃない。愛され変顔っていうのかな」
 
うまい魚を食べて、二人の平凡なオヤジは淋しくて、悲しかったバレンタインデーを忘れるのであった。

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2014年11月15日号・2022年3月15日号の掲載情報です。

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