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釣る前に、食べる前に、ヤイトハタという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、ヤイトハタという魚を知ろう!

ヤイトハタとはスズキ目ハタ科に属する海水魚である。別名、ニセヒトミハタ。本州中部以南の南日本に分布する暖海性の大型ハタである。

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ヤイトハタ(スズキ目ハタ科マハタ属)の生態

相模湾・島根県以南の沿岸の岩礁域に生息している。相模湾以南とあるが主に九州南部から琉球列島にかけて多い。
漢字にすると「灸羽太」。「灸」は「きゅう」とも読める。今どき「灸」を知る人も少ないだろう。「もぐさ」というヨモギの葉を乾燥させたものを体の悪い部分にのせて火をつける。限りなく火が皮膚に近づいたときこれをどけるのだが、後に黒いあとが残る。すなわち「灸=黒い斑点」だから本種は「黒い斑点のあるハタ」となる。ただ問題になるのが黒い斑点のあるハタはとても多いということ。似ているハタにチャイロマルハタ、ヒトミハタにシロブチハタ、オオモンハタなどがある。過去に何度かヤイトハタを送ってもらったが、到着したものを見るとシロブチハタであったり、チャイロマルハタであったり。古く和名はニセヒトミハタであったこともある。ハタ類でももっとも同定の難しいものの一つであることも知っておくといい。

ヤイトハタの値段は?

流通値段は沖縄などの養殖ものは高級魚、天然ものは超高級魚である。大きければ大きいほど高い。特に5㎏を超えるとキロあたり1万円前後。当然5㎏1尾で5万円は、ハタの最高峰クエとあまり変わらない。

「ヤイトハタ」の寿司…甘味が感じらて、少しトロリ、とろけ感がする

十二月間近になって劇的に寒くなった。朝方、市場に向かう丘の斜面が霜で真っ白になっている。

「寒いね」と言いながらたかさんに持参したものを渡す。

「おお、冷てえ。何これ?」

「マイナス六十度の冷たさだよ。アカムツ。駿河湾沼津沖でマシュマロボールで釣ったんだって」

「誰が?」

「そりゃ名人・鮹さんに決まっているでしょ。ちょうどボクが旅に出ていたので冷凍してくれてたみたい」

「すごいなー。マイナス六十度って、マグロ屋の冷凍庫と同じだね」

「最近の釣り師の近代化って目を見張るようだね」

「それにマシュマロで釣れんだね」

自然解凍して翌日、三枚に下ろしたのを見ると、とても冷凍したようには見えない。これを握ってもらったら絶品であった。ついでに頭を煮つけにしたら、これも最高。

さて、このアカムツがよかったのを最後に、市場のつり師はカワハギばかりを持ってくるし、鮹さんとはなかなかタイミングが合わなかったりで、めぼしいネタが来ない。

と、そんなとき徳島県宍喰漁業協同組合のナガさんからケータイ。魚の写真が添付されていた。それはまごうことなきヤイトハタで、しかもデカイ。実にうまそうだ。

「あの、これ正月用にバラして保存するですけんど、少しいりません」

「もちろんです。少しだけでいいので分けてくださいマセマセ!」

これが翌日の夜には届くのだから、徳島は遠くない。そのまた翌朝、マグロ屋に預かってもらうべく、市場まで行き、マグロ用の冷凍庫のドアを開けてビックリ。なかに、たかさんがいたのだ。

「どうしてここに?」

「正月用のマグロの在庫整理だよ。そっちこそなぜ?」

ハタの切り身を預けに来たというと、いきなり包みを奪い取り、店に向かって歩き出した。

「なぜ持って行くの?」

「当たり前だろ。こんなかたまりで冷凍してどうするつもり。ちゃんと同じ大きさの冊に切ってからだろ」

店に着くとまな板にかたまりを置き、丁寧に切りつけていく。

「あ、脂がのってるね」

「そお、少し食べてみようか?」

たかさん切れっ端を口に放り込んで、首をひねる。

「今日はダメだな。少し寝かそ」

そのまま切り身を冷蔵庫に仕舞い込んだ。

「あのさ、それで年末に若い女の子誘って鍋パーティするんだ。だから預けにきたわけよ。わかる?」

「わかったよ、わかった。少しだけ食べてみればいいじゃない。あとは処理して預けておくから」

翌日行くと、まだだというので、その翌日顔を出した。それでもまだだというので、週末を挟んで四日後にやっとありついた握りが、信じられないくらいにうまかった。

「やっぱり天然ものはうまいね」

「たかさんもわかった。養殖ものとはまったく別物だよね」

口に放り込んで舌に触れた途端に甘味が感じられて、軟らかくなった身に脂が混在しているのか少しだけトロリと、とろけ感がする。なによりも魚のうま味が強い。

「これ、同じもの買ったらキロ一万だってね。うちじゃとても手が出ない。ありがとうね」

カウンター奥にいた常連さんも

「ありがとうございました。おいしかった。ヤイトハタってうまい」

「え、まさか残りは?」

「もうないよ。ありがと」

「どうしてくれるの暮れの鍋」

「いいじゃないの。どうせ若い女の子なんて縁がないんだし」

図星かもしれないなー?

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2016年1月1日号の掲載情報です。

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