スズキ(スズキ目スズキ科スズキ属)の生態

北海道から九州、朝鮮半島南岸・西岸。内湾、汽水域、淡水域にも侵入する。
1957年までは国内、中国大陸東部、朝鮮半島にスズキは1種類とされた。
後に黄海や南シナ海にいるものはタイリクスズキ、汽水域にあまり入らない体高のあるものはヒラスズキとなった。
今から思えば3種は明らかに別種だ。
ヒラスズキとスズキは漁業者や釣り人が早い内から別種として扱っていたし、大陸にいる斑紋の大きいスズキも頭部の形が小さくてより尖っているなどで、別種だと判断できる。
ただ、3種とも日本列島と陸続きだった東アジアの、狭い水域にいる。
スズキの値段は?
はるか古代から珍重されてきた魚である。
神話にも登場するし、武家の時代になると無骨な姿が尊ばれ、江戸時代には夏を代表する高級魚だった。
これが高度成長期の海洋汚染のために臭いスズキが登場して、価格を急激に下げた。
近年、汚染の解消とともに徐々にまた価値を上げつつある。
残念ながら50cm以下のフッコはまだまだ安値が続いている。
ただ、夏以外にも味がいいので、こちらも少しずつ値をあげつつある。
フッコは1kgあたり卸値1000円前後。
今回の700gで卸値1尾700円ほどだ。
スズキの釣行レポート
東京湾の冬の名物ジギングシーバスがシーズン佳境を迎える。川崎「つり幸」は古くからシーバス乗合を続けている船のひとつだ。タックル、釣り方の基本を押さえておこう!
千葉の富津「浜新丸」では、3月から伝統的なエビスズキをスタート。45〜65㎝級が釣れており、トップ10匹以上の釣果も!出船時間が早い分、昼前には帰港できるのも魅力。9月まで狙えるので、ぜひ旬のスズキを!
スズキの寿司…東京湾のフッコがこれほどゴージャスな味だなんて!

とかく、釣り人の周りには釣り人が集まってくる。
とかく、たかさんの周りには変な人が集まってくる。
ある肌寒い朝、市場の釣り名人、クマゴロウの店の裏手に、大量のワラサ、イナダが置かれていた。
「また茅ヶ崎に行ったんだ」
「何回行っても面白いんだもん」
「この前、巻き上げ途中でサメに食われて半分になったキハダあったよね。あのサメの正体がわかった」
「まさかこの前のサメ?」
十月半ば、長崎からメジロザメ科のハナザメが送られて来た。
あまりにも大きくて、我が家では手に負えず、クマゴロウに丸投げ。
店の大まな板の上で下ろしてもらったのだ。
その数日後、今度は相模湾の定置にもハナザメが大量に入った。
腹の中にはサバ、イナダにキハダマグロがいっぱい詰まっていたらしい。
そこに青梅の釣り名人で料理人、梅吉さんがやってきた。
最近、東京湾市原あたりに通っているらしい。
ふたりが隅っこに隠れたので追いかけたら、そこにあったのは大型クーラー一杯のフッコだった。
「フッコだけど大きめだね」
「全部、このサイズでした」
「どうやって釣ったの?」
「船から護岸に向かってルアー投げるんです。入れ食いでした」
未だルアー釣りをやったことのないボクだって、こんなに釣れるならやってみたい。
釣って二日目だというが、締めた後が見当たらない。
「これじゃ、うまくないでしょ」
「わかってないね」
クマゴロウ曰く、スズキは締めると(傷つけると)、そこから水が入り、味が抜ける。
予めクーラーに海水を入れ、できるだけ氷で冷やしておく。
そこに無傷で放り込み持ち帰るのがベストなのだ、とのこと。
「食べてみないとわかんねー」と言ったら一本くれた。
野締めのフッコには、とてもじゃないが食指が伸びない。
面倒なので、そのままたかさんに丸投げする。
「野締めかい」と、店の中に消えて行った。
その後ろ姿がなんだか弱々しい。
午後、店ののれんをくぐると、相変わらず変なオヤジだらけだった。
「去年の今頃は若い娘がわんさかいて、楽しかったよね」
「カウンターに花が咲いてた」
コロナで近所の女子大生たちも、外出を控えているようなのだ。
「たかさん、あれつけてよ」
「あれはこれ」
小さな切身が、たかさんの手の平に、ちょこんと乗っていた。
「まさか?」
「店で出したら人気で、気がついたらほとんど残っていなかった」
「とりあえず最後の二かん」
これがまずかったら諦めがついたのだけれど、ウルトラC級のうまさだった。
いきなり舌に甘味が広がり、すし飯と馴染んだ後からフッコのうま味が浮き上がってくる。
「これ正真正銘の江戸前なんだ。
釣ってそのまんま、野締めの二日目」
「フッコは野締めに限るなー。それに秋が旬だったんだね」
それから幾日かが過ぎ、たかさんから「おいで」、とケータイが入る。
店ののれんをくぐったら、
「梅さんのフッコ。これが三日目」
前回あまりにもよかったので、また、お願いしていたらしい。
あえていえば、全体的には三日目がいい。
ただ、二日目の方の食感がよく、喉に消えた後が爽やかだ。
けだし魚は難しい。市場で見向きもされない東京湾のフッコが、これほどゴージャスな味だなんて。
「この歳まで知らなかった(涙)」
へたれ顔でため息つく。たかさんの体がしぼんで、消えてしまいそう。
「カンバック、カワイイ女子大生。たかさんが老衰死しそうだよぉ」
以上の記事は「つり丸」2020年11月15日号の掲載記事です。
◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。
文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。
つり丸の最新号 2020年11/1号 (2020年10月15日発売)、電子書籍(デジタル版)は税込み600円。今なら初回500円割引やレビュー500円割引もあります!また、定期購読なら割引や送料無料!
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