竿は短めで張りがある物、リールは手巻きでOK

この釣りは手軽に楽しめて魚も釣れるので初心者にも最適だが、実はベテランが熱くなるほど奥深い。
そこで、道具や仕掛け、釣り方などいろいろご紹介したいことがたくさんあるので、いきなり本題に入らせていただきたい。
竿は、一日手持ちで誘い続ける釣りであるから、軽くて短いものがオススメ。
長さ2m前後のLT用、もしくはゲームロッドが最適だ。また、「この釣りはしっかりとシャクることが大切です」と飯岡「太幸丸」の実川四郎・大船長は言う。
そのため、竿の調子については7対3もしくは8対2の先調子のものをセレクトするとよいだろう。
リールは、ポイントの水深が30m前後であるため、手巻きの両軸リールがあればOK。もちろん小型の電動リールでもよい。
ただ、ドラグ性能がよいものを選ぶようにはしたい。
ハリスは2号であり、ハナダイはキュンキュンと突っ込みが鋭く、案外よく引く。
また、とくに今季は例年よりも水温がまだ高いため、青物も多く回遊している。
「ドラグはしっかりと調整して、やり取りはそれをちゃんと利用するようにしてください。ズルズルは青物が掛かればオマツリの原因になりますし、ガチ締めは大型ハナダイや青物が掛かったときにハリスが切れてしまいます」と実川船長。
そして、もうひとつリールに機能を追加するとすれば、カウンター付きであればより快適だ。というのも、詳しくは後述するが、ポイントは主に魚礁周りであるため、タナを取る際は仕掛け(ビシ)を海底まで着けないからだ。
もちろんPEラインのマーキングを見れば事足りてしまうし、カウンターが付いていたとしても最終的にはPEラインのマーキングでタナは取るのだが、最も役立つタイミングがアタリダナを把握するとき。
「今、下のタナから何m巻き上げたから、水深◯mでアタった」と計算するよりも、直接「今◯mでアタった」と見えたほうが、次の投入以降スムーズにそのタナを直撃できる。カウンターは数mの誤差が出るかもしれないとしても、その数字のままの水深前後を攻めればよいのだ。
船宿仕掛けは、ハリス2号、ウイリー3本&空バリ1本の合計4本バリ仕様。
先端の空バリにはオキアミを付ける(オキアミは各自で持参するか、朝船宿で受け付けする際に購入できる)。
すべてウイリーの仕掛けでも悪くはないが、ウイリーに食って来ない場合に寂しい思いをしてしまう。
実際、当日も圧倒的にオキアミに食いがいい時間帯があった。
また、すべて空バリまたはカラーバリの仕掛けは、オキアミを3〜4本のハリに付けると手返しが悪く、今期は水温が高いということもあり、エサ取りが多い場合は釣りにならないという状況にもなりかねない。
さらに「ハナダイの活性が高くなると、ウイリーによく食うようになります。そうなると、数も伸びます」と常連さんが言うように、手返しの面でかなり有利となる。
そういった総合的な観点から、この仕様の仕掛けになっているというわけだ。


船宿仕掛けはウイリー3本、空バリ1本の合計4本バリ仕様
ビシ窓の調整は確実に!! 基本はシャクって、止める
この釣りで一二を争うほどに重要な事柄といえるのが、「ビシ窓の調整」だ。
「コマセはまきすぎないようにしてください。まきすぎるとハナダイはすぐにお腹がいっぱいになって、食いが悪くなってしまいます」と実川船長は言う。
取材時、船長にプロッター(ポイントや船の航跡を見る電子機器。
カーナビのようなもの)を見せてもらったが、かなりのピンポイントで攻めていた。
狭い範囲で大人数でコマセをまくのだから、一人ひとりが大量にまいてしまうとアッという間に食いが落ちてしまうだろう。
また、ウマヅラやフグ、ベラなどのエサ取りも多く寄せてしまうだろう。
そこでどうするのかといえば、上窓は1/3〜1/2開け、下窓は全部しっかりと閉める。
上窓の狭い隙間からポロッ、ポロッと出る程度で十分なのだ。
「釣れ具合によって、この上窓も調整してやります。ほんのちょっとの差で食いが変わりますよ」とは常連さん。こんなところも、この釣りの奥深さのひとつだ。
次は釣り方だ。
先に少し触れたように、「太幸丸」が攻めるのは魚礁周りが中心。
そのため、船長からは「25〜20mを攻めてください」といったように、タナは範囲が指示される。
仕掛けを投入する際は、絶対に下のタナより沈めないようにしよう。根掛かりを避けるためだ。
ウイリーを使ったこの釣りは、「ウイリーシャクリ」というだけに、シャクリ方も重要となる。
基本となる釣り方のシャクリの範囲は、時計の7時の位置から9時ぐらいまで。
力は入れず、スッと軽く竿を持ち上げる程度でOKだ。
強いシャクリは、それを一日やり続けることとなるのだから正直疲れる。
軽くシャクっただけで効果的なコマセワークを実現するために、前述のような竿を使うのだ。
シャクった後は必ず止める。
「状況にもよりますが、基本は3秒ぐらい止めます」と船長。
その後は時計の7時の位置まで竿を下げつつ、下げた分だけリールを巻いて(1〜2回転)道糸を巻き取る。

ビシはFLの60号。重要なのは上下の窓の調整。上は1/2〜1/3開け、下は全閉だ
基本で釣れない時間帯は いろいろやってみよう!

最後に、もうひとつ釣り方をご紹介したい。それは、いま紹介した基本の釣り方ではあまりアタリがなかった時間帯に、常連さんが大型主体でコンスタントにハナダイを釣り上げていた方法だ。
「釣れないときにどうするか、です。それを探るのもこの釣りの面白さで奥深さです」とは常連さん。
その方法とは、シャクるのではなく、竿を動かす範囲は7時から9時までと基本の釣り方と同じだが、ス〜〜〜ッとゆっくりと持ち上げてやる、というもの。
基本のシャクリは止めているときに食わせるのに対し、この常連さんの方法は上げているときに食わせるのだという。
「ゆっくりと竿を持ち上げるだけでもコマセは十分に出ていますし、この上げでハナダイが食って来ます。あとは魚の活性に合わせて、上げのスピードを速くしたり遅くしたり、上げる距離を長くしたり短くしたりと、いろいろ試してみて、そのときに一番食いがいい誘いを探します。ハナダイは上げでも食うのに、シャクリの方法はこの上げを捨ててしまっているんです」
ウイリーシャクリというと、初心者に最適! と紹介されることが多く、実際手軽で魚は釣れるし初心者にも最適な釣り物なのだが、実はもの凄く奥深い。
美しいピンクのハナダイは“おめで鯛”で新年には最適で、どんな料理にも合うから食べても美味しい。
やったらきっとハマること間違いなし! の「太幸丸」のコマセハナダイは、それぐらい魅力的な釣りだ。
千葉 飯岡沖 ハナダイ 釣行レポート
LT使用&お手軽で初心者にもオススメも、釣りはかなり奥深くておもしろい!

ポイントは飯岡沖の水深30m前後。竿入れは6時となっている

ライトタックルの小物釣りと侮るなかれ。キュンキュンとよく引き、バラシも多い。油断するとヤラれるぞ!

40cm前後の大型はタモ入れ必須。基本は船長が入れてくれるが、周囲でもヒットしていることも多いので自分で入れられる体勢は整えておこう

見事にオデコが張り出した大型ハナダイ。その容姿から“デコダイ”とも呼ばれる。デカイ!!

一般的なウイリーのシャクリ&止め主体の誘いではなく、上へ上へと誘う釣り方で大型を連発していた常連さん。見事な釣れっぷりだった

色も薄いピンクでマダイと容姿がほとんど同じのハナダイ。晴れの席で供される尾頭付きの焼き魚はこのハナダイであることが多い

水深が浅くタックルがライトなので女性や子供も楽しめる

船宿仕掛けはウイリーバリ3本、オキアミ付け1本の合計4本バリ仕様。多点掛けを狙って数を伸ばそう

「ホントにこれ撮るの?小さいよ…」とベテランさん。食べるならこれぐらいのサイズがオススメです

「この釣りは本当に奥深くて面白いので、年に何回かは楽しみます」とベテランさん。今回の取材でその言葉の意味を納得した

コマセシャクリだけにゲストも多彩。マダイ、メバル、イナダ、カンパチ、ウマヅラなどが顔を出した。


今回、取材にご協力いただいたのは、千葉・飯岡港「太幸丸」
結婚式など、晴れの席でよく出てくる尾頭付きのタイ。
実はマダイではなく、このハナダイ(正式名称はチダイ)であることも多い。
マダイと同様の美しいピンク色で、大型で40㎝、平均で膳や小皿に乗せやすい25㎝程度ということで、このハナダイが使われるのだろう。
釣りをしない人からすれば、見分けがつかないほどだ。
そんなハナダイが、飯岡沖で大型まじりで好調だ。
「ウチは大型主体で狙っていますが、釣り方はコマセのウイリーシャクリなので、初心者も手軽に楽しめます。ですが、実はこの釣りは案外奥深いんですよ」とは、飯岡「太幸丸」実川四郎・大船長。
取材日、その奥深さを象徴するようなことが起きた。前半はウイリーの基本的な釣り方にはあまりヒットせず、それとは違った誘いに大型主体でヒットしていた。
それが、後半になるとパターンが逆転したのだ。
「一日で3回誘い方が変わるといわれています。それを探るのがこの釣りの本当の面白さです。今季は水温が例年よりもまだ高いので、年明け後もしばらく楽しめそうです。釣れている限りは続けますよ」と実川船長。
新年の“おめで鯛”に最適で、非常い奥深いハナダイ釣り。
ぜひこの機会に体験していただきたい。
タックルはLT用またはゲームロッドなど。60号ビシをシャクれる胴からバットにかけてしっかり張りがあるタイプが望ましい