生きエサか身エサかは 状況次第

「この釣りは本当におもしろいよ。これまでいろんな釣りをやってきたけど、この釣りはトップクラス。誰か私の代わりに舵を握ってくれるなら、いますぐにでも竿を出したいぐらいだよ」と話すのは、この道50年以上という大ベテラン、茅ヶ崎港「ちがさき丸」の米山時晴船長だ。
そんなベテラン船長自らが「この釣りはおもしろい!」と絶賛するのだから、間違いなくおもしろいのだ。
この釣りとは、小型のカタクチイワシをエサにした「泳がせ根魚五目」。
生きエサだからエサの動きにハラハラドキドキ。
それを食わせるおもしろさもある。
水深が20m前後と浅いので、オモリは軽くタックルもライト。
エサは小型のカタクチイワシゆえ、仕掛けも細い。
そんなタックル&仕掛けで根周りを狙い、五目というだけにカサゴやハタ、そしてメバルなど多彩な魚たちがヒットしてギュンギュン竿を引き絞るのだから、スリリングでおもしろくないわけがないのだ。
しかも、それらの魚は良型が多い。
ただ、である。
「近年はイワシの確保が難しくて、今期は早い時期にエサが入ったのですが、いまストックしているイワシがなくなったら次のイワシが入荷するまでは切り身のエサとなります。ただ、狙う場所や魚は基本的には同じですし、身エサは身エサで積極的に誘って釣るという、生きエサとはまた違ったおもしろさがあります」(米山船長)。
今後はエサの状態がどのような状況になっているかは不明だが、例年ではいったんは身エサになっても3月頃に生きイワシでの釣りを再開できることが多いという。
生きエサにしろ、身エサにしろ、この根魚五目がおもしろいことには変わりない!
透明度が高いのでハリスは細めが有効

ここからはタックルや仕掛けを紹介に入るが、この釣りはいろんなことが絡み合っているので、話があちこち飛んでしまうことをご了承いただきたい。
前述のように、エサは小型のカタクチイワシ。
そのイワシは船に積み込まれる前は港近くに設置されたイケスで飼育しているので、水温に慣れている影響か船のイケスに入れられていても元気いっぱいに泳いでいる。
だが、やはりイワシはイワシ。
漢字で鰯と書くほどだけに弱りが早いうえに、エサ用ということもあって小型だけに弱りはさらに早いと心に留めてはおきたい。
そんなイワシをいかに元気よく泳がせてアピールさせて、誘うか。
そこがこの釣りのキモのひとつだ。
そのため、常連さんたちはエサの扱いはもちろん、タックルや仕掛けにもそれぞれ工夫をこらしている。
エサは必要以上の数は船のイケスからは持って来ない。
イワシを入れておくバケツには数匹だけにしておき、面倒でもそれを使い切ってから取りに行くようにしたい。
ブクを持参している常連さんもいた。
「竿は何用というものではなく、中古ショップで軟らかいものを見つけてこの釣りに最適だと思ったのでそれを使っています。ムーチングのような調子で、軟らかめのほうが食い込みはいいですね」
「仕掛けは細いほうがエサの動きがよく、根魚の食いもいいので、自作してきました。ハリスが細いだけに、竿も軟らかめのほうが安心ですね。私は竿はメバル用を使っています」常連さんたちはそう話す。
そして、常連さんの多くが使っていたハリスは1.5号で、みな自作していた。
さすがに初心者がこのような細ハリスの仕掛けを自作するのはちょっと大変だと思われる。
だが、船にはちゃんと細ハリスの出来合い仕掛けもあるのでご安心を。
そして、このような細ハリス仕掛けを使う理由は他にもある。
海水の透明度が高いのだ。
「温暖化の影響なのか、1月末だというのに水温も高く、こんなに岸に近いのに真夏の黒潮の影響を受ける時期のように澄んでしまっています(当日のポイントは烏帽子岩周辺。海岸にいる人がはっきり見えるほど)。生きエサの釣りは濁っていたほうがいいんですけどね…。そのため、仕掛けは細いほうが食いはいいです」と米山船長。
さらに、水温や透明度が高いことは、他にも影響を及ぼしている。
「ベラやフグが高活性で、貴重なイワシをすぐに食べられてしまいます。ただ、例年春は濁った潮が来るので、そうなれば期待はできると思います。とはいえ、海水温は年々上がっているようで、このあたりではほとんど見ることがなかったアカハタがここ数年は劇的に増えています」
ちなみに、「ちがさき丸」の泳がせ根魚五目のターゲットは、カサゴ、アカハタ、メバルをメインに、キジハタやマハタ、オオモンハタといったハタ系、さらにはオニカサゴなど。
そして、生きエサを使うだけに、ヒラメやスズキなどがヒットすることも珍しくないという。
アカハタは沖縄の海にもいる南方系の魚。
関東近郊では南房や伊豆海域では多く見られるが、それが相模湾の最奥部である茅ヶ崎沖で増えているのだ。
そして、根魚釣りは根掛かりはつきものであり、根掛かりを恐れていては根魚は釣れないとまでいわれるほどだが、サンゴのようなものが多く厄介な根掛かりも増えているようなので、予備の仕掛けやオモリは多めに持参しておきたい。
竿は、多くの常連さんが使うメバル竿や、6対4調子など軟らかめのライトゲームロッドなど。
リールは小型両軸でOKで、道糸はPE1〜2号、オモリは使用する竿に合わせて15〜20号をセレクトする。


︎仕掛けは船宿や船上でも購入可能。生きエサは細めのハリスがオススメだ

エサは生きた小型のカタクチイワシ。イワシが入手できない場合はサバの切り身となる。イワシがあっても切り身は常時船に用意があるので、切り身で釣ってもいい

イワシは下顎から上顎へ一緒に刺し抜く。身エサはチョン掛けで

根魚だけに海底をしっかり意識して
釣り方は、生きエサでも身エサでも、ターゲットが根魚だけに常に海底を意識しながら釣ることが重要。
それは、常にオモリを海底に付けておくという意味ではなく、エサが海底からどのあたりにあるのか、しっかりと把握しながら釣るということだ。
生きエサと身エサの釣り方の大きな違いは、生きエサはエサを元気よく付けられればエサ自身が魚を誘ってくれるということ。
したがって、「生きエサの場合はあまり仕掛けを動かさないほうがいいですね。時々底ダチを取るだけで十分です」と米山船長も常連さんも言う。
身エサの場合は、釣り人が何もしなければ船の上下動や潮の流れて多少はヒラヒラ動くとは思うが、やはり釣り人が積極的に誘う必要がある。
ではどのような誘いが有効なのか、米山船長に聞いてみると「それは釣り人次第です。そのときの潮の流れや魚の活性によっても違います。ガンガン誘う人もいます。いろいろ試してみるといいと思いますよ。それがこの身エサの釣りの楽しさです。ただ、マメに底ダチは取るようにしてくださいね」
かなりざっくりとした紹介になってしまったが、この釣りのおもしろさはとてもこのコーナーだけでは紹介しきれない。
ぜひ実際にチャレンジしていただき、ベテラン船長絶賛の釣りを存分に楽しんでいただきたい。
【相模湾・茅ヶ崎沖】泳がせ根魚五目 釣行レポート
船長歴50年以上!の大ベテラン船長が 言うのだから間違いない! この釣りは 「もの凄くおもしろい!!」

ポイントは茅ヶ崎のシンボル、烏帽子岩周りの20m前後。根はザクザク。よりいっそうスリリングだ

エサは生きた小型のカタクチイワシ。イワシの泳ぎを損なわないよう、ハリスは細いほうが食いがいい、という。常連さんたちは、なんと1.5号だ。そんなハリスでこのこのサイズ。スリリングで楽しくないわけがない!

ここ数年で急激に増えてきたというアカハタ。沖縄にもいる南方系の魚だ。温暖化の影響なんですかね…

この釣り初挑戦というが、後半怒涛の大型ラッシュを見せてくれた

同じアカハタでも模様が異なり個性的だ。

根魚以外には、ヒラメやスズキもヒットするという

ハタ系では超絶嬉しいキジハタ。他にマハタなども

メバルも30㎝級が顔を出すという

ご夫婦で乗船し、細ハリスで次々とつり上げ船長も「スゴイ!」を連発していた。メバルにオオモンハタだ

このカサゴもナイスサイズ。この日は良〜大型主体でヒットしていた

今回、取材にご協力いただいたのは、神奈川・茅ヶ崎港「ちがさき丸」
「誰か私の代わりに舵を握ってくれるんだったらさ、今すぐにでも竿を出したいぐらいだよ。だって、この釣りはそれぐらいおもしろいよ。生きエサで釣るし、水深が浅いからよく引く。しかもサイズがいいのも結構まじる。この釣りよ りおもしろい釣りは、そうはないんじゃないかな」とは、この道なんと50年以上という大ベテ ラン、茅ヶ崎港「ちがさき丸」の米山時晴船長だ。
「ちがさき丸」の泳がせ根魚五目は、泳がせというだけに生きた小型のカタクチイワシをエサに使い、カサゴ、アカハタなどのハタ類、メバルといった根魚を狙うというもの。
しかも、水深が浅くてハリスも細く、オモリが軽く竿も軟らかいということも手伝って、かなり強烈にギュンギュン竿を引き絞って非常にスリリングだ。
「問題は、イワシのエサが入りにくいこと。今確保してあるエサがなくなったら、次のエサが入荷するまでは切り身エサになります。ただ、切り身は切り身で、自分で積極的に誘って釣るので、生きエサの釣りとは違ったおもしろさがありますよ」
3月以降も生きイワシがあるかどうかは不明だが、どのエサにしろ狙う魚は同じ。
この強烈なギュンギュンを味わったら、きっとヤミツキになること間違いなしだ!
以上の記事は「つり丸」2021年3月1日号の掲載記事です。
つり丸の最新号 2021年2/15号 (発売日2021年02月01日)、電子書籍(デジタル版)は税込み600円。今なら初回500円割引やレビュー500円割引もあります!また、定期購読なら割引や送料無料!
本命はカサゴやハタの仲間、そしてメバル。