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釣る前に、食べる前に、ミナミアカエソという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、ミナミアカエソという魚を知ろう!

ミナミアカエソ(ヒメ目エソ科アカエソ属)相模湾、駿河湾、伊豆諸島周辺、小笠原諸島、屋久島、琉球列島、台湾、ハワイ諸島の水深80m前後の岩礁域などの間にある砂地に生息している。

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ミナミアカエソ(ヒメ目エソ科アカエソ属)の生態

おいしい魚だが市場では価値ゼロ。まとまって獲れれば…

相模湾、駿河湾、伊豆諸島周辺、小笠原諸島、屋久島、琉球列島、台湾、ハワイ諸島の水深80m前後の岩礁域などの間にある砂地に生息している。

水族館などでは、見た目はアカエソにそっくりだと解説されているらしい。

ただしアカエソ自体が非常にマイナーで、だれも知らない可能性が強い。

全長30cm前後になり、シロギス釣りなどでくるオキエソを赤くしたような魚だ、と説明するとわかるだろうか。

エソの仲間はみな同じような姿をしていて、見分けるのは非常に難しい。

中でも、アカエソとミナミアカエソを見分けるのは魚類学者にとっても難問だった。

結局、国内でミナミアカエソの存在が判明したのは1980年代になってからだ。

ミナミアカエソの値段は?

関東に住んでいるとわからないが、エソ類は需要が高い。

蒲鉾原料として重要だからだ。日本中の蒲鉾屋さんから引く手あまたなのだ。

ただ蒲鉾に使えるのはマエソの仲間だけ、アカエソの仲間はまったく見向きもされない。

食べたらおいしい魚なので、おいしい蒲鉾が出来そうだけど、まとまってとれないので使えないのだ。

ということで流通上での価値はゼロだが、おいしい魚なので釣れたらぜひお持ち帰り願いたい。

ミナミアカエソの寿司…もちもち食感がたまらない!!

四月になったばかりの、ある朝のこと。

市場の釣り名人クマゴロウのところに、ウメイロ多数に、シマアジが三尾も並んでいた。

考えてみると、銭州解禁ではないか。
 
横道に逸れるが、ウメイロは和歌山県串本での呼び名だ。

これを和名に採用したのは、日本魚類学の父、田中茂穂だ。

串本では「うぐいす」とも言う。

どちらにするか悩んだらしいが、和菓子の名前じゃあるまいし「うぐいす」じゃなくてよかった。
 
黙って一尾持ち帰って食べたら、至福の味だった。

朝、ウメイロの刺身でご飯をかけつけ三杯食べた。

「これじゃ、ダイエットになるわけないね…」とたかさんに言ったら、

「もっとデブになれ」
 
細巻き二本がきた。切り口を見ても、食べても、魚だとは思うけど、正体がわからない。

細巻きに巻き込むものを鉄芯というのだけれど、これがまさかの「なめろう」だった。

「どこのどなたでしたっけ、すしとみそは合わないと言った人は」

「オレだ!」
 
鉄芯の正体はいくら聞いても言わない。

アジなどと違いもちもちして、ねっとり舌にからみつくのに、後味がさらりとして飽きが来ない。
 
念のために。「なめろう」は、千葉や徳島での料理名で、同じものを三陸では「みそたたき」という。

魚の身を細かく切り、ねぎ、みそ、しょうがとたたいたものだ。

昔、あくまでもつまみ用に、「アジを『なめろう』にして」、と頼んだら怒ったのなんの。

「すし屋がみそを使うのは、みそ汁だけでい」なんて啖呵を切った。たかさんも、昔は職人らしい職人だったのだ。
 
それがどうだろう。あくまでも手の空いたときだけではあるが、アカガイのひもの「なめろう」を皮切りに、マアジ、メバチ、サワラなど、いろんな魚を、切れっ切れの包丁で叩いては、細巻きや軍艦にしている。
 
どんなに考えても鉄芯の正体がわからない。

ただ、あのもちもち感は初めてではない。

例えばスズキやマグロなど進化の進んだ、筋繊維の発達した魚類の食感とは違う。

原始的な魚だけどイワシでもない。
 
それから数日後、またまたクマゴロウのところに、ウメイロ、シマアジ、ヒレナガカンパチが並んでいた。

撮影用にウツボとクサヤモロをくれた。

ありがたいが、何かが足りない。

銭州のシマアジ釣りに必ず来る、凶暴な顔のあいつがいないのだ。

「ウメも持っていきな」
 
もらったお礼に、銭州での釣り自慢を疲れるくらい聞いてあげた。
 
その日の、午後、『市場寿司』に行ったら、まな板に赤い魚が小山を成していた。

「なーんだ。前回のもちもち鉄芯は銭州のミナミアカエソだったんだ」

「そんな名前なの。わかんないからクマちゃんとエソにしようって」
 
確かにエソには違いない。エソらしく団子にして汁に入れても、薩摩揚げにしても実にうまい魚なのだ。
 
そこに軍艦巻きがきた。

「細巻きより、もっともちもちするし、ミナミアカエソの味がより明確にわかる。あと二かん追加ね」

「あのね、エソの軍艦巻きを店で出すのは明日でおしまいにする」
 
こんなにうまいすしが、もう食べられないなんて悲しすぎる。みそとすし飯は思った以上に相性がよく、エソ科の魚特有のもちもちした食感の中に、身自体からくる甘味が浮き上がる。

食べたときの満足感も十二分に得られる。

問題は手にへばりついて扱いにくいことだけらしい。

「それぐらい辛抱しなさいよ」

「だめ。もちもちするのは、うちの奥さんだけでいいの」
 
のろけを聞いてあげたお礼に、ミナミアカエソの細巻きをおみやにしてもらった。

めでたし、めでたし。

以上の記事は「つり丸」2021年6月1日号の掲載記事です。

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

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