シケ! イルカ! 困難に負けず 激うまブランド魚を釣り上げろ!
「これは、付いたなぁ!」会心のアタリと根切り後の重量感、巻き上げ中にピチピチと音を立てて張り詰めるPEラインに思わず口を突く自画自賛。
トモから順に取り込まれる仕掛けにはチラリホラリと緋色が舞い、期待感は最高潮。
隣席の巻き上げが終わった時点で残り100m。
ズラリ連なる提灯行列が脳裏を過った、その瞬間…。
シケの合間に新島へゴー!

12月3日は下田須崎「ほうえい丸」からTEAM仕立船で新島キンメ。
9月中旬から続く荒天延期の連鎖はとどまるところを知らずスケジュールはガタガタ。
今回も直前まで気を揉まされたが、久々にスケジュール通りの釣行となり安堵する。
とは言え、シケの合間に何とか…の海況はベストコンディションには遠く、加えて後半は吹いてきそうな状況。早めに勝負を決めたいところ。
新島沖では日によりイルカ禍の情報を踏まえ、自作対策器具(詳細は下記を参照)持参する「本気度」で臨むこの日。
定刻6時半、船長の合図でミヨシの筆者から順に投入開始。
全体の「流れ」が重要なこの釣りでは1投目のミスがその後の釣りを左右するケースもあり、半世紀に迫る深海釣り歴で幾度となくこの場所での投入を繰り返して来た筆者も少なからず緊張する特別な場面。
全員トラブルなく投入を終えると、「この場所はダラダラ伸ばしでやって下さい」と佑二郎船長。
「ほうえい丸」ではポイントや潮況により仕掛け着底後の操作が異なり、その都度細かく指示が出る。
これを聞き逃さず確実に実践すれば、初挑戦でもブランドキンメをズラズラ連ねるチャンスはあり、逆に異なる操作を行えばベテラン釣り師でもボウズの憂き目を見る可能性も否めない。

ディープマスター・テル岡本のタックルは「アルファタックル ディープインパクト カイザーG」に「ミヤエポック CZ9キンメスペシャル」
ディープマスター テル岡本のディープな深海テク
◇過去の漁具と実体験から自作した「イルカよけ」
懸念されたイルカの気配すらなく今回全く出番なしで終わった自作のイルカよけ。
かつて東伊豆富戸で行われていた「イルカ追い込み漁」の際に使用された追い込み器具(金属打撃時の音波を嫌うイルカの習性を利用し群れを港に追い込む)を簡略化した物で、言ってしまえば単なるステンレスパイプだ。
かつて茨城県平潟沖でキンキ釣りの際、巻き上げ中船の周囲をカマイルカの群れに囲まれる場面に遭遇。
金属音で撃退できるかもと鉄パイプを海中に差し込みオモリで叩くと思惑通り、それまで整然と泳いでいた群れは瞬く間に四散、超高級魚を無事取り込む事ができた。
その後も富戸沖のLTキンメ(現在は禁漁)でも同様に金属を叩いてイルカを撃退しており新島沖でも効果が期待できよう。
今回自作したのは2m弱のステンパイプに尻栓とヒートンを取り付け、グリップ部分を熱収縮チューブで加工。
スパイラルコードで長尺のステンレス製S字フックを叩き棒として接続した極めてシンプルなタイプで、材料費はホームセンター、釣具店併せて5,000円程度。
これでブランドキンメをイルカから守れるなら、まさに「安い物」だ。
カッ飛ぶ潮でアタリは微妙も 次々上がるグッドサイズ

ハリ数は20本まで。オモリは鉄筋1.8㎏
ほぼ魚探通りの水深で着底も、あっという間に1.8kgの鉄筋がカッ飛ぶ潮に噴き上げられ、ほぼ出しっ放しに近い。
「伸ばしながらアタリを取って」のアナウンスだが、相当難易度が高いコンディション。
結局1投目は船中ノーヒットに終わる。
2投目も潮況は変わらず。
どんどん伸ばしていく最中、一瞬首を傾げる程度の「変化」を捉えるもキンメと確信するにはあまりに微細。
ややあって「アタリがすごく小さいですよ」と、フルレンタルで挑戦の白柳さんをサポートしていた佑二郎船長の声。
筆者のラインが800m以上出たところで「先に巻き始めた仕掛けを追い越さない速度」設定の指示でトモから順に巻き始めるが、無反応の竿先が目立つ。
そんな中、負荷が見て取れるのはミヨシの白柳さんと胴の間の鈴木さんの「紅二点」。
特に鈴木さんの「カイザーG」は早潮に押されてラインが横方向に走る状態でも「これぞ新島キンメ」の派手な抵抗に期待が膨らむ。
まずは白柳さん。単発ながら姿を見せた幅広肉厚のグラマーな魚体に満面の笑み。
不本意な結果に終わった前回の雪辱を果たす船中1号はこれぞ新島キンメの1.7kg。
ハードコンディション下の良型に周囲からは羨望の眼差しだ。
しばしの後、仕掛けを手繰り始めた鈴木さん。
確かな手応えに「いる、いるっ!!」と声を上げる。
見えて来た緋色は先の1.7kgよりも確実にひと回り大きい。
船長の差すタモに収まったのは「今日イチ」となる2.4kgのグラマラス。
さらに下バリにも1.5kgのグッドサイズと「両手に華」で破顔一笑、歓喜の声。
フルレンタルの初挑戦でキンメ釣りに魅せられ即座に最新タックルを購入するほど「ハマった」鈴木さんに乙姫様からのプレゼントだ。
「船長、女性しか釣らせないじゃん」という、磯さんのブラックジョークにメンバーから笑いが漏れる。見知った仲間内の仕立てならではのホノボノシーン。
最後に筆者が「微妙な変化」の主、1kgチョイを跳ね込んでこの流しは船中4枚。
3投目も状況は変わらず、遠路秋田から参戦の石川氏と磯氏が片目を開けるにとどまる。
誰だ糸を切ったのは? 次回必ずリベンジだ!
ポイントを大きく移した4投目。
若干潮が緩み、伸ばす最中に「仕掛けが止まる」合間が…できた途端に待望のシグナル。
同様のタイミングで多くのメンバーもアタリを捉えた様子。
トモ寄りは空振りながら胴から前は1~3匹、筆者のカイザーGには結構な負荷が見て取れ、数枚は付いたとほくそ笑んだが…ラスト100mで幹を切られ1匹のみ。
5投目空振りで迎えた6投目。これぞキンメの明確なアタリに「食った!」と右手を挙げてアピール。
冒頭巻き上げ時の歓喜もまさに好事魔多し。
残り数十メートルでてっぺんの1匹だけを残してまたも幹糸がスッパリ。
イルカの仕業ではないのでサメか、それとも…。
この後次第に強まる西風に残念ながら7投目で撤収。
トップ7匹のハードなコンディションの中、2度もチャンスを掴みながら幹切れで結果に繋がらず、よもやのキロ級4匹で終了とは不甲斐なし。穴があったら入りたいっ!!
皆が笑顔、とはならなかったこの日だが、それもある意味新島キンメの魅力。
誰もが次回に夢を馳せ帰路に就いた。
新島沖のキンメダイ 釣行レポート
海況よければ 大型ゾロゾロ

TEAM OKAMOTO恒例の新島キンメ釣行。一度あの味を知ってしまうと、毎回リピーターになって参加してしまう

ゾロゾロゾロゾロ…と多点掛けで、1投でお土産になることも珍しくない

この日最大2.4㎏。この型の良さが新島沖の魅力

大きくて真っ赤な魚体が海面に姿を現す。この瞬間が快感だ

この日はゾロゾロ多点掛けは少なかったがグッドサイズが2匹、3匹と掛かってきた

テル岡本も良型2匹に笑顔

こちらは1.7㎏。新島沖では、これでもまだまだ小さいほう
超絶美味!! 一度食べたらヤミツキのブランドキンメです


美味しい新島キンメ。刺身、煮付け、鍋、どれも絶品

今回、取材にご協力いただいたのは、静岡・下田須崎港「ほうえい丸」
筆者若かりし頃、静岡県下田周辺でも「冬の風物詩」的存在だった新島沖のキンメダイ釣り。
その究極の脂の乗りと食味の良さで、今では釣り人が手にできる「最高峰ブランド魚」として知られ、年間通じて多くの船宿が乗合を出船している。
3㎏を超すような「ジャイアント」サイズの出現確率が高いのは初夏シーズンであるのも周知の事実だが、それでもこの季節、その姿を見ないとどこか落ち着かない…。
そんな存在でもあるのが新島沖のキンメなのだ。
ゆえに、冬のこの時期と初夏の二度、TEAM OKAMOTO恒例行事として下田須崎「宝栄丸」をチャーターし「ブランド」に挑むのだ。
海況、速潮、イルカやサメ禍…絶品のキンメダイとの逢瀬を阻むいくつもの難関は存在する。
だが、それがあるからこそ、深海セレブとご対面の瞬間は誰もが歓喜し相好を崩す。
シケの合い間、なんとか釣行叶ったこの日、タフコンディションの中で自身は天国から地獄の急転直下に苦汁を飲むも、メンバーの踏ん張りで2kg超のグッドサイズが浮上。
なんとか取材成立に安堵する。
季節柄、新島キンメとの逢瀬のチャンスは限られるが、それだけに凪日に当たれば期待も膨らむ。
大型がズラズラ…もある!
天候も含め、新春の運試しに臨んでみてはいかがか。
以上の記事は「つり丸」2022年1月15日号の掲載記事です。
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