アカアマダイ(スズキ目スズキ亜目アマダイ科アマダイ属)の生態

外房から九州南岸の太平洋、青森県から九州西岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海の水深20〜156メートルの砂地に生息。
アマダイ科の代表的食用魚というとアカアマダイ、シロアマダイ、キアマダイの3種。これにスミツキアマダイと沖縄などでとれるハナアマダイで、国内でとれるアマダイ科は全5種になる。アマダイは東京での呼び名。京都、大阪では「ぐじ」で、京都中央市場の方に聞いた話に「ぐじの若狭焼きは女房質に入れても食いたい」は京男の意気地というのがある。
その京都でいちばんのアカアマダイは兵庫県津居山産の一塩もの。京都では生よりも一塩ものが好まれる。対するに東京築地でいちばんは神奈川県佐島ものとされていて、こちらは鮮魚をよしとする。
アマダイの値段は?
1キロ級のアカアマダイの平均価格は3000円くらいではないだろうか? 後は産地や鮮度で変わってくるが、その最高峰・佐島産(相模湾産ということ)はいくらか? 実ははっきりわからないのである。佐島漁協での水揚げ値段が1キロあたり1万円ほど。想像するに築地などでは1.5倍として、1尾15000円前後だろう。買うよりも釣れ、という魚である。
アマダイの釣り方
どのエリアよりも早く開幕する東京湾口のアマダイ釣り! 今期も8月の終わりから船が出るようになり、滑り出しも好調とのことで、この釣りに詳しい久比里「巳之助丸」へ出撃。様子を伺ってきた。
相模湾では平塚港「豊漁丸」が9月の最初の週末からアマダイ船を開始している。いきなり9月5日には、24〜44㎝までを一人2〜5匹という好釣果を記録。その後も、トップ5匹前後を記録する日が多い。
年末を締めくくるターゲットとして人気があるのが赤い魚。オススメのひとつがアマダイだ。相模湾ではベストシーズンに突入、各船宿で好釣果を記録。葉山あぶずり港「たいぞう丸」では11月17日からアマダイ船をスタート。当宿は大型アマダイにこだわって狙っており、コンスタントに50㎝オーバーまじりで大型アマダイを取り込んでいる。
「アマダイ」の寿司…「甘鯛」と書きたくなる気持ちが分かる程の甘み

昨年の秋から被災地に行ったり、栃木に通ったり、仕事上に大きな変化があったりで超多忙。
正月三が日は自宅にこもりきりで仕事。今年の初外出はなんと市場の初荷の五日。久しぶりの外出で頭がくらくらしながら、『市場寿司』に行くと、相変わらず苦労知らずの還暦オヤジが締まりのない顔つきで「おまかせ」を握っていた。
「毎年のことだけど、初荷には魚、ないねー。話題はマグロだけだね」
店にはお客が一人、二人で、まことに静か。たかさんファンの女子大生は田舎にでも帰ったのだろうか。
「今日さ、村さんがタイ、波さんがアマダイ持って来てくれたよ」
「へー、初釣りだね。うらやましい」
そのアマダイを握ってもらって、自宅で仕事をしながら食べたら、一人きりでキーボード叩いているのが嫌になるくらいにうまい。通常流通してきたものとは別物というか、別の次元の味。これ本当にアマダイ? 一人バンザイしてしまった。
だいたいアマダイなのにシコシコと心地よい食感が感じられる。漢字で「甘鯛」と書きたくなる気持ちがわかりすぎるほどに甘みがある。
相模湾のアマダイ恐るべし。京都では一に(兵庫県)津居山、二に若狭とランクづけされている。今年は津居山のアマダイを食べて、相模湾と比べてみたくなってきた。
やっと仕事が一段落ついて、久しぶりに市場に行ったら、釣り名人のそば屋の浅やん、塩乾総菜卸の福さん、昭島の居酒屋『酒元』さんなどが、アマダイ釣りの話で盛り上がっている。今年は豊漁らしい。
浅やんがにこにこしながら、
「頼まれた魚、なかなか釣れないね。釣れるのは本命ばっかでさ」
昨年からアマダイ釣りにまざるのだという背に五つの斑紋のあるヒラメ、すなわちタマガンゾウビラメが釣れたら、持ち帰ってくれるようにお願いしているのだ。釣り師の外道はボクにはお宝なのである。
今年は魚が全般的に高い。特にアマダイやマダイの高値が続く。
成人の日を過ぎても、どうにもこうにも初荷の日に食べた相模湾のアマダイの味が忘れられない。
あまりの高値に八王子まで回ってこないアマダイを、築地の仲卸にお願いして配達してもらった。これがなんと一キロあたり八千円。今時の若い娘の言葉に「清水買い」というのがあるが、まさにそれをやってしまったわけだ。
高知産の一・三キロで、まけてもらっても税込み一万円は痛い。
『市場寿司』に持ち込んで、刺身と握りで食べて、「あれ?」だった。
確かに甘みが強いし、食感も心地よい。うまい! のだけれど、「比べなければ」の話なのだ。
「たかさん、波さんのがうまいね」
「そうだね。値段の差かな」
考えてみると佐島・大楠漁協にあがる縄もの(延縄漁)のアマダイは、水揚げの時点で一万円以上する。これは築地場内に「佐島産ならどんなに高値でも買う」という人がいるからだ。波さんのは、同じ相模湾産なのだから、キロあたり八千円とは格(値段)が違うということになる。
「この一万円のアマダイを握りにすると一かん、いくらかな?」
「うちだと出せないネタだけど、普通のすし屋なら一かんで二千はとると思うな。それでも安いくらい」
「それじゃボクは波さんに、四千円以上ごちになったてこと」
「結果そうだよな。感謝しろよ。オレもだけど」
「波さんって、我々に年の初めから、こんなによろこばれてるんだから、きっといい年になるんじゃない」
「そうだよね。もう一回持って来てくれたら、もっといい年になるんだけどなー。そうだ村さんもねー」
◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。
文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。
以上の記事は「つり丸」2014年2月15日号の掲載情報です。
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