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釣る前に、食べる前に、ホウセキハタという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、ホウセキハタという魚を知ろう!

ホウセキハタは、スズキ目ハタ科マハタ属の魚。体側の斑点は瞳孔よりも小さいか、または同じくらいの大きさである。尾鰭後端は丸くならず、オオモンハタに似ているが、尾鰭の後端の、淡色の縁取りがない。体長60cmを超える。

ホウセキハタ(スズキ目ハタ科マハタ属)の生態

伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾~九州、沖縄の沿岸の岩場、サンゴ礁に生息。全長60㎝前後になる中型のハタ。相模湾や本州中部あたりまでは、あまり大型は取れない。比較的普通に見られるのは紀伊半島以南。
体の文様は網目状。近縁種のオオモンハタに斑紋と姿形がそっくり。尾鰭の最後端に白い筋の縁取りがないことと、オオモンハタの斑紋がはっきりせず、ぼやけているのに対して、ホウセキハタの方がはっきりしていることで判別している。斑紋や色からして田中茂穂がつけた標準和名「宝石羽太」の意味がわからない。鹿児島県などでの「胡麻あら」の方がわかりやすい。

ホウセキハタの値段は?

近年、全国的にハタ科が高騰している。網などにかかった野締め(即死させていないもの)でもキロあたり2000円前後する。これは全魚種のなかでも段違いに高い。関東の築地などには活魚でくるものが多く。1キロを超えるものはキロあたり5000円以上となる。今回すしに使ったものはキロあたり卸値5000円で約2キロなので税別で1尾1万円ほど。ハタ類を買うたびに財布が軽くなる。釣りに出かけた方が、断然安そう。そうだハタは釣るに限る!

「ホウセキハタ」の寿司…このうまさは文字にならない

魚貝類を調べて三十年を超えるが、まだ一度も見ていない、手に入れていない魚がまことに多い。なかでもハタ科のノミノクチ、スミツキハタは喉から手が出るほど欲しい。そこで日本各地の漁師さん、釣り人の方に、ウォンテッドしている。

これに対しての返信というか、いきなり現物が送られてくるなどが、月に二~三件はある。これがことごとく外れ。見た目からして違うものもあるが、基本的に斑紋が網目状のホウセキハタとオオモンハタの二種だ。この外れの二種類が届いて、いちばん喜ぶのが小振りのハタが好きな、たかさんである。

「これ買ったらー、めちゃくちゃ高いんだからね。感謝してね」と念を押して渡すも、ただただ「うれしいな、うれしいな」とにこにこするだけ。感謝のかけらもしめしはしない。

そして六月下旬、築地場内を歩いていたら、馴染みの『加藤水産』に、見事なホウセキハタが泳いでいる。もっとも魚の少ない時期なので、「うまい魚が食べたい」という純な気持ちで買い求めた。このホウセキハタが巨大だった。この種では最大に近いと思われる重さ二キロで、一尾一万円也もしたのである。

これを我が身内(主に若い美人)と、刺身、ちり鍋(夏の鍋なので夏野菜をたっぷり入れる)、湯引き、唐揚げなどで楽しんだ。が、まだ片身が丸のまま残ってしまったのだ。

半身を手渡しながらたかさんに「都心泊が続いて来られないので、少しだけ残してね」と念を押して仕事に出たのである。そして、『市場寿司』ののれんを再びくぐったのは、なんと一週間後。午後一時過ぎとはいえ、店内にお客はゼロ。カウンターに座ると、たかさんが意味不明の「コケコッコ」を連発。

「残ってる」

「残ってるよ。そら」

さてまな板の上にさらしに巻いたものを出す。腹側の身、すなわち上身にして四分の一が出てきた。

「よくこんなに残っていたね」

「コッコケー、コケコッコ」

炙った皮を、細切りに、これをきゅうりと合わせ酢のものに、刺身をガラスの皿に盛りつけ出してくれる。今日はやけにていねいだ。

ボクはおもむろにまだ冷え冷えの茨城県結城市「忠勇 赤ラベル 特別本醸造」を取り出し、コップ酒をぐびり、刺身にしょうゆをちょんとつけて口に放り込む。辛口の酒に洗われた舌に強い甘味がツンと刺すようである。その後にじんわりとこれまた強いうま味が来る。しかも、しかも恐るべし、一週間たつのに、まだ心地よい食感が残っている。

「たかさん、“仕事明けに 美酒佳肴あり ボク幸せ”字余りだ」

「うまいだろ。味がぐんとよくなったのは、来てから五日目くらいからかな。ハタは寝かせろ、だね」

〆の握りが、驚くほどうまい。このうまさは文字にならない。口に含んだ途端、言語が総て消えて、喉に消えるや思わず、ため息が出た。

「どうだー! 完璧な一かんだろ」

「ホウセキハタって偉い」

昼ご飯代わりの五かん総てがホウセキハタなのに、飽きが来ない。

午後一時過ぎに早々店仕舞い。のれんを下ろし、たかさん冷蔵庫から桃の甘い発泡酒を出し、一気飲み。

「背と腹に分けてな、濡れたさらしに巻いて、マグロ屋の冷蔵庫に入れて寝かせてみたんだ。これも技ってやつよ。冷蔵庫がいいのかね。うまい具合に熟成するのよ」

「ハタは寝かせろか、刺身よりも握りのうまさにノックアウトされた。お見事!ちなみにさっきから“コケコッコ”連発だけど、何?」

「毎年そうだけど、六月は閑古鳥が鳴くってこと。コケコッコ~」

それなら「カッコー」でしょ。

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2014年8月1日号の掲載情報です。

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