味覚、価格ともに頂点に君臨する1.5㎏以上の大型「地キンメ」


大型主体の新島キンメは。食べる楽しみも大きい! まずは絶品の刺身を味わいたい。しゃぶしゃぶも最高だ。定番の煮付けも食べたい!

今回、取材にご協力いただいたのは、静岡・下田須崎港「ほうえい丸」。
アカムツはルビー、大ムツが黒ダイヤ、ベニアコウなら魔性の紅花。その希少性と価値を宝石や花に例えられる深海ターゲット。
しからば「地キンメ」こと新島沖の大型キンメダイはさしずめ「金の延べ棒」か。
「キンメダイ水揚げ日本一」の下田漁港。ここに水揚げされるキンメは、漁獲される場所によって「地キンメ」、「島キンメ」、「沖キンメ」と大きく3種に区別される。
このうち、味覚、価格ともに頂点に君臨するのが1.5㎏以上の大型「地キンメ」だ。その地キンメ狙いで新島沖の深みをメインに、ほぼ周年乗合船を出し続けるのが下田須崎港の「ほうえい丸」だ。
このところ職漁船の下田漁港へのキンメの水揚げがやや低調とのことで、「ほうえい丸」の釣果にもムラはあるようだが、3㎏級ジャイアントキンメがコンスタントに狙える初夏と並び、今がこの釣りのトップシーズンであることに変わりはない。
職漁船が不漁ゆえに、地キンメの「1匹の価値」がてっぺんまで上り詰めたこの冬、「釣り師が手にすることが叶う唯一無二の極上キンメダイ」を求めて須崎港に集結する釣り人達を乗せ、「ほうえい丸」は今日も新島沖に挑んでいる。
タックルは本格深海用。仕掛けは投入回数分用意

新島沖では本格的な深場タックルが必要。筆者のタックルはロッド「アルファタックル・ディープオデッセイ モデルG」、リール「ミヤエポック コマンドZ9 アニバーサリーリミテッド」。

ハリ数は20本まで。オモリ(鉄筋1.8㎏)は船に用意してある。ヨリ取りリング、水中ライトも必需品。クッションゴムを付けると口切れが少なくなる。

大型キンメ狙いの特エサがコレ、スルメの肝付きゲソ半割り。

付けエサを目立たせるアピールグッズも有効だ。

投入回数分、最低8組の仕掛けを用意する。「ほうえい丸」では乗船料とレンタルタックル、仕掛け8組(エサ、オモリ付き)がセットとなったフルレンタルシステム(3万円)もある。


タックルは以下のようなものを用意したい。
◆ロッド
口切れしやすいキンメダイには「やや胴に乗るアクション」、もしくは使用オモリに対し「やや負け気味」のグラス素材深海専用ロッドをセレクト。巻き上げ時の復原力を抑え、バラシに配慮するのがセオリー。
おすすめはアルファタックル「ディープオデッセイ モデルG」、「ディープインパクトTERUスタイルRTⅠ」など。
◆リール
高強度PE10~12号を1000m以上巻いた大型電動リール。
スムーズに滑るドラグと「新釣力コントロール機能」を搭載した「ミヤエポック「コマンドZ」シリーズの9~15サイズなら万全だ。
◆仕掛け
ハリ数は20本以内なら何本でもOK。ベーシックな仕掛けはハリス12~14号0.8~1m、幹糸24~30号1.5~1.8m、細軸ムツバリ18~19号(もしくは藤井商会「ホタ鈎」16~18号)、捨て糸は12号を4.5~7.5m。
筆者は深場の大型&大ムツ狙いにはハリス14号1.5m、幹糸24~30号3m、藤井ホタ18号の10本バリを使用する。
ハリスにヤマシタ「マシュマロボール」を配すのも一手。
発光による集魚力ではなく浮力や潮受けアップを期待する設定ゆえ、無発光タイプ「マシュマロボールアカムツSP」がおすすめだ。
掛け枠に巻き込んで8組(プラスα)持参し、出船前に2~3組(もちろん投入回数分でも良い)にエサ付けを済ませておけば万全だ。
ライン先端にはミヤエポックヨリトリWベアリング」「キャラマンリングⅡ型」などの大型ヨリトリ器具+ゴムヨリトリ5㎜1mを配す。
赤色発光水中灯を仕掛けの上部、もしくはセンター付近に配すとキンメのみならず同ポイントでまじる大ムツに有効だが、潮の動きが鈍い際にはカラスザメを引き寄せるので状況に応じた対応が必要だ。
オモリは申し合わせで鉄製のみと定められているが、「ほうえい丸」では投入時の降下速度差による追い越しでオマツリ発生を抑えるべく、使用は宿用意の1.8㎏鉄筋(乗船料に含む)に限定している。
◆エサ
「ほうえい丸」では予約時に注文すればイカ、ハラモ、サバ、鮭皮のミックス8組分を用意可能。持参の場合はそれぞれ幅1㎝、長さ15㎝程度のタンザクにカット、タンザク中心線上のなるべく端をチョン掛けする。
2~3㎏級「ジャイアントキンメ」や大ムツを狙うなら幅1.5㎝、長さ20㎝程度の大振りのサバタンザクやスルメイカの肝付きゲソ半割りが実績あり。ちなみにサンマエサの使用は申し合わせで禁止されており、要注意。
疑似餌ではニッコー化成のイカゴロエキス配合擬似餌「スーパーイカタンBIG」も実績あり。常温保存で「汁」がなく、手指や服に汚れや臭いが付かないのも嬉しい。
オモリを根掛かりさせて、追い食いを狙え!

船長の合図で順番に投入、巻き上げも指示に従って行う。アタリ後の追い食い操作も事前に手順を確認しておこう。

「大型ゾロゾロ」も多い新島沖だが、この日は単発が多かった。

キンメ釣りでは、投入や巻き上げに船それぞれのルールがあるので、あらかじめ確認しておこう。
「ほうえい丸」では、掛け枠での投入が基本で、船長の合図に従い、ミヨシまたはトモからひとりずつ順番に仕掛けを下ろしてゆく。順番がきたら合図と同時に投入できるよう、全ての準備を整えておく。
船長は潮の流れと人数を計算して投入ポイントを設定するが、ここには「モタ付き、失敗によるロスタイム」は基本的に含まれないから、合図で投入できない場合は「1回休み」を厳守する。
投入の遅れは自身だけでなく、後から投入する同乗者の仕掛けが着底時にポイントから外れる可能性があることを忘れずに臨んで欲しい。
投入時は片手で握った掛け枠を海面に対し45度程度に構え、合図と共にオモリを「落とす」(放り投げると捨て糸が切れる場合あり)。これで仕掛けはパラパラと順序良く海中に放出されるが、この時点ではクラッチはフリーにせず、仕掛けが全て海中に入ってからスプールをサミングしつつフリーにするのがポイント。スプールフリーで投入すると「ショックでバックラッシュ」や「ヨリ取りの重さで道糸が先に海中に入り、手前マツリ」などのトラブルもあるからだ。
◆アタリ~追い食い
船長の計算通りに着底すれば直後、時にそれ以前(この場合は「食い上げ」となる)にアタリが出るが、そうは上手くは行かないのが現実。着底後はポイントや釣況で異なる船長からの「操作指示」に従い、アタリを待つ。
新島キンメの代表的な仕掛け操作が以下のよなもの。
──着底後糸フケを取ってアタリを待ち、アタリ後はオモリを着底させて意図的に根掛り(アンカーリング)させ、以降船の移動に合わせてラインを弛めず、かつ捨て糸を切らないよう注意しながら船長の合図まで「張り延ばし」を続ける。最初は垂直に立っていた仕掛けを根掛りさせずに30~45度の角度に寝かせ、全体を反応の中に入れて複数のキンメをハリに掛ける──というスタイルだ。
土屋佑二郎船長は同一ポイントでも潮向きなどの状況に応じて、「糸フケを除き、そのままアタリを待つ」、「アタリ後もラインは送らず追い食いを待つ」、「着底直後から合図まで送り続ける」、「流しの途中から延ばす」など、臨機応変の指示を出す。このアナウンスを聞き逃さず、確実に実行することが釣果に繋がる。
アタリが出たら、すぐ船長に合図するのを忘れずに。どの辺り、どんな反応で食ったか、次回投入の判断材料になるからだ。
◆巻き上げ
投入同様、船長の指示に従い順番に行う。ドラグを充分調整した低速気味で、緩急を付けず一定のペースで行うが、「ほうえい丸」ではオマツリ回避策として「自分より前に巻き始めた仕掛けを追い抜かない速度厳守」を徹底している。
◆捨て糸の切り方
意図的に根掛りさせる「基本釣法」では巻き上げは「捨て糸切り」からスタート。
まず糸フケを完全に巻き取り、ロッドが絞られた状態で一旦巻き上げをストップ。ドラグを目一杯まで締め込み、船の移動で捨て糸が切れるのを待つ。仕掛けを這わせ過ぎてハリが根掛りし、容易に処理できない場合はタックルを傷める前に速やかにラインをリリース。船のボーズなどに巻き付けて切る。
リールの巻き上げ力に任せて強引に切る行為はロッドを傷めるしキーパー脱落等のリスクもあり厳禁だ。
◆取り込み
仕掛け再使用は考えないので、タモのアシストを受けつつ、仕掛けをどんどん船内に引き上げたら、速やかに新しい仕掛けをセットして次回投入に備える。
釣ったキンメは海水氷のクーラーに収めて全体を万遍なく冷却しよう。極上のキンメの味が楽しめるはずだ。
以上の記事は「つり丸」2018年1月15日号の掲載情報です。
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新島沖で釣れる大型キンメダイは「地キンメ」と呼ばれ、市場では高値で取引される超高級魚。脂が乗っていて超美味しい!