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釣る前に、食べる前に、ホシササノハベラという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、ホシササノハベラという魚を知ろう!

ホシササノハベラは、スズキ目ベラ科ササノハベラ属の魚。青森・千葉県以南の琉球列島をのぞく日本各地。済州島、台湾。岩礁域にすむ。

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ホシササノハベラ(スズキ目ベラ科ササノハベラ属)の生態

青森県~九州、屋久島の浅い岩礁域に生息している。国内の沿岸域にもっとも普通に見られるベラのひとつ。産卵期は夏から秋。小型の時には雌で、成長すると群れのなかで大きなものが順番に雄に性転換する。順位の高い雄がたくさんの雌を従えてハーレムを形成することでも有名。
古くササノハベラは1種類であった。やや深場にいるアカササノハベラと別種となったのが1997年のこと。アカササノハベラの方が比較的温かい海域を好む。
地方名はアカササノハベラと共通で、関東では単に「べら」、和歌山県では「べろ」。ひょっとしたら「べら」は舌の形に似ているためかも。「むぎめし」、「がちがち」。

ホシササノハベラの値段は?

関東ではベラは非常に安い。ほとんど値がつかないといっても過言ではない。関西などで修行した料理人が、あまりの安さに驚いた、などという話があるくらい。野締め(漁の間に死んでしまったもの)はほとんど値がつかず、1㎏あたり500円前後。活け締めしたものでも800円前後しかしない。今回の握りに使った150gサイズで1尾120円くらい。これから夏にかけての味のよさを鑑みると、「安すぎますね」とは築地仲買のつぶやきである。

「ホシササノハベラ」の寿司…皮と皮下に十二分にうま味があると皮下に十二分にうま味がある

毎回釣りものを変える浮気性の人と、一つの釣りに熱中する人の、二つのタイプに釣り師は分かれるのだと思う。八王子の市場で食材や塩乾を扱っている福さんは、どちらかというと後者。一つの釣りものに一シーズン通して通う、そんな律儀者で、のめり込むタイプらしい。

昨年の九月から始めたカワハギ釣りを、二月になっても続けている。ボクの場合間違いなく前者で、毎回釣りものを変える。典型的な浮気者なので、市場の休み明けごとにいただく、カワハギに脅威すら感じる。

二月初めの日曜日、時季のアンコウ料理を食べに、茨城県水戸まで日帰りの旅に行ってきた。本場のアンコウ料理を堪能。体がぽかぽかと温まる。昼酒に、ほろ酔い加減になり、思わず通りに立つ黄門様の頭をなでなでして帰ってきた。

その翌日、福さんからまたカワハギをいただき、その夜は関西流の「ちり鍋」に。こいつも体がほかほか、しみじみ冬の味覚に感動する。

その翌日、『市場寿司』で出た握りが、これまた福さんがカワハギ釣りで釣ったホシササノハベラだ。

多摩地区で生まれ育った福さんの場合、百パーセントベラは外道。いつもリリースしているのを、お願いして持ち帰ってもらったのだ。

まだまだ脂ものっていないだろう、味もイマイチなんだろうと思っていたら、意外にも身に厚みがある上に、皮と皮下に十二分にうま味がある。

たかさんが仕事をして、皮目をあぶったのもプラスに働いているようだ。実に香しく、握りとしての完成度も高い。福さんにも、常連さんにも、大好評。

たかさんをして、

「ベラだけはうまくないと思ってたんだけど、意外だね」

これを兵庫県明石の魚のプロ、大分県中津のプロに話したら、

「そうですかね。関東のベラは、うもうない思いますけどね」

と早速、明石から来たのは「ぎざみ(キュウセン)」。確かにうまいが、比較は出来ない。

大分から来たのは、まごうことなきホシササノハベラだったが、網ものであること、締め方の悪さから、福さんの相模湾産にはかなわない。

「やはり相模湾のがいちばんだね」

なんて話をしていたら翌週また、

「これが最後かな」

常連のナミさんがカワハギとホシササノハベラを持って来た。

「まだまだ仕立てても通うけどね」

福さんもやって来た。ふたりでカワハギ釣りに行って来たらしい。

たかさんが、三枚に下ろしながら、

「前回のよりも脂があるみたい。厚みもあるかなー」

「そう。春から夏にかけての魚だから、春はそこまで来ているのかも」

市場の魚も春ものに交代中だし、『市場寿司』の常連さんがシロギス釣りの話をしている。

さて、今季最後(?)のカワハギ釣りで上がったホシササノハベラが前回にも増してうまい。

「ベラを食べると春が近いなと思う。そしてすぐに夏が来て」

「秋が来て、冬が来て、今年も……」

常連さんが、「ベラって性転換するって本当?」と聞くので、

「そうだよ。小さい時は雌で、成長すると縄張りを持ちハーレムを作るんだ。その頂点にいるのが王様、すなわち雄だね。最初雌だったのが群れの順位が上がると雄になって、ハーレム全部の雌を支配するんだ」

ナミさんが、ほおづえをつき

「ボクもベラに生まれてくればよかったなー」

たかさんが、ニヤニヤ笑いながら、

「そうかい、オレなんて今でもハーレムの王様だけど」

「孫の方が王様なんじゃないの」

「それは言えてますな」

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2015年3月15日号の掲載情報です。

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