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釣る前に、食べる前に、サクラマスという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、サクラマスという魚を知ろう!

サクラマスは、サケ目サケ科に属する魚。ヤマメはサクラマスの河川残留型(陸封型)に対する呼称である。太平洋北西部を中心に分布するが、北から順に、オホーツク海沿岸から朝鮮半島・北日本まで分布する。

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サクラマス(サケ目サケ科サケ属)の生態

山口県以北日本海、神奈川県以北の太平洋側の河川に遡上する。寿命は3年間ほどとされ、陸封されたものをヤマメと呼ぶ。
田中茂穂は1956年の書籍で標準和名を「マス」としている。実は奈良・平安時代には「マス」と「サケ」という言語があって、前者は本種のみをさす言葉で、後者は標準和名のサケのみをさす言葉だった。これに東北で揚がるカラフトマスや、ベニザケ(古くはベニマス)が全国的に食べられるようになって、「サクラマス」という標準和名が固定化されたようだ。市場ではもっぱら「本マス」と呼ばれている。

サクラマスの値段は?

サケ類のなかではもっとも高価。カラフトマスやサケが比較的安いのに対して、本種は明らかに高級魚。1キロあたり2000円以上は当たり前。上物は3000円以上になることも。当然、3キロクラスで1尾6000円から9000円。釣り上げたら大切にお持ち帰り願いたい。蛇足だが、サクラマスには希に肥満体というか非常に体高がある「板マス型」というのがいる。これはまことに脂ののった個体で頭に「幻の」がつく。値段もビックリするくらいに高いので、釣り師の方は狙って欲しい。

「サクラマス」の寿司…うま味が強いのにイヤミがない味である

北海道の知り合いから四キロ上の、みごとなサクラマスが送られてきた。当地では釣りの対象として人気があるようで、ドヤ顔をした本人との記念写真が同封されていた。

さっそく「あんかけうどん」を作る。あっさりと煮たサクラマスを温めたうどんにのせて、甘辛いあんをかけたもの。春だとはいえ、まだ肌寒い夕時にあったまるのである。ほかにもあれこれ料理して、知人を呼び、ささやかな宴を催し振る舞う。

多摩丘陵は桜が咲き、そして散り、その他名も知らぬ木や草が一斉に花を咲かせてキレイである。

旅や仕事で、久しぶりに市場に顔を出すと、仲卸のまな板に向かい、すし職人、たかさんが、サクラマスをおろしている。体長が短く体高がある。明らかに「板マス」である。

「板マスだね」

「なんだ、それ?」

「本マス(サクラマス)はサケの仲間だから普通すらっと細長いだろ。でもこいつは腹が出っ張ってずんぐりしてる。こういうの『板マス』っていうんだ。脂ののりも、味の方も格別だよ。高いんじゃない」

「高いよ。でも最近、魚が少ないし、春らしいからね。半分買いだけど、これで一万円くらいする」

三枚に下ろして皮を引き、しっかりとラップする。これをマグロ屋に渡すと、帰ってきて、こんどはでっかいクロソイをおろしにかかる。

ネタケースにはクロソイにヒラメが白身、マグロが大トロ、中トロ、赤身、自慢の穴子に、こはだに卵焼きが並ぶ。花の季節なので桜でんぶがあり、彩り良しなのである。

さて、サクラマスはこの日は冷凍中だ。これにはわけがある。まだ厳寒の二月、たかさん、サクラマスやホッケ、イカの刺身を酎ハイの肴にした。その深夜、胃袋がでんぐり返るほどの激痛が襲ってきた。救急病院に駆け込んだが、原因がわからない。鎮痛剤や胃薬を飲んでいる内に、嘘のように痛みがひいた。

「きっとアニサキスに違いない」

ということで、疑わしい魚はマグロ屋の冷凍庫で数日寝かしてからすしダネとして使うようになった。

マイナス五十度の威力はすごい。解凍したサクラマスはおろしたばかりのよう。さっそく切りつけて、出てきた握りが「うまい!」

サケらしい風味があり、うま味が強いのにイヤミがない。その上、すしダネにしてキレイだ。桜前線とともにとれる地域が北上するため「桜鱒」と呼ばれているのだが、桜花に負けない美しさなのである。

「たかさん、すし飯の上に花が咲いたようだね」

「ようだね」

春は足早というが、四月になったら、暖かい日が続き、ご近所の和菓子店に柏餅が並ぶ。関東では柏の葉に包むが、ボクの故郷徳島県ではサルトリイバラの葉で包む。和菓子が死ぬほど好きなボクのために、故郷から送られてきた柏餅をカウンターで食らい、合いの手にサクラマスの握りを食べる。それほどにサクラマスの握りはうまい!

そんなボクを見ていた近所のOLが「気持ち悪い」と言う。最近の若い娘は、あんこと握りの、相性のよさがわからないらしい。

「ね、たかさん」

「オレも見てると気持ち悪いよ。握りよりも、こっちにしな」

サクラマスの身を酢じめにして薄くスライス、少し甘めのすし飯の上にのせて押したものが来た。

「富山名物『ますのすし』を作ってみたんだ。どうだ!」

若い娘と「おいしいね、おいしいね」と食べて、「またサクラマス仕入れてね」とお願いすると。

「これが最後かな。もうすぐ夏だ。海に聞いてくんな……」

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2013年5月1日号の掲載情報です。

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