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釣る前に、食べる前に、ソゲ(ヒラメ)という魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、ソゲ(ヒラメ)という魚を知ろう!

ヒラメは、カレイ目カレイ亜目ヒラメ科に属する魚の一種。日本での別名は地方によって異なり、カレ、オオグチガレ、ソゲ(ゾゲ)、オオクチ、テックイ、ハス、オオガレイ、メビキ、ホンガレイなど。北海道では「てっくい」、東京湾では1kg以下の物を「そげ」と呼んでいる。

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ソゲ(カレイ目ヒラメ科ヒラメ属)の生態

北海道から九州南岸、屋久島までの水深10~200mの砂地に生息。中国大陸やピーター大帝湾にも生息するが日本列島が主な生息域であるようだ。
関東では出世魚のひとつ。1㎏以下を「そげ」、2㎏くらいまでを「大そげ」、それ以上を「ひらめ」という。この「ひらめ」クラスになるためには4年の歳月がかかる。ちなみに「ひらめ」は関東での呼び名で意外なことに「かれい」と呼ぶ地方の方が遙かに多かった。例えば新潟県新発田市などでの「ひらめ」はマガレイのことで、標準和名のヒラメは「大がれい」という。もっとややこしいのは山形県鶴岡市ではヒラメを「まがれい」という。

ソゲの値段は?

流通上は今や多くが養殖ものでやや高値だが安定している。底曳き網や定置網でとり、漁の途中で死んでしまったものは、養殖ものの活け締めの半値以下だ。もちろん天然ものの活け締め、活魚は、産卵後以外は常に高価である。この春の産卵期、「ひらめ」クラスの値が下がったときに値を上げるのが「そげ」だ。普段は活け締めでキロあたり卸値2000円前後しかしないのが卸値3000円を超えてくる。今回の主役500gでも1尾1500円もするのだから高い。

「ソゲ」の寿司…甘味があって心地よい食感が楽しめて後味がさらり

三月になった途端、厳しい寒の戻りがあった。大慌てでダウンを取り出して『市場寿司』ののれんをくぐると、ネタケースに今日もヤリイカがある。お腹が空いていたので「たかさん、丼」とお願いすると、やたらにヤリイカ大盛りの丼が来た。

「すごく豪華だけど、いくら」

「いくらでもいいよ」

「どったの? 不機嫌なのかな?」

不機嫌の原因は下らないことだった。要するにヤリイカを仕入れた直後、『市場寿司』で主催しているお魚料理教室の生徒が「どうぞ」と、静岡県で釣ったヤリイカをどっさりと持って来たのだ。

「仕入れる前に言ってよー」と身をよじりよじりながら言っても、相手は善意なのだから致し方ない。

さて、都心に出てホテルで一泊。翌早朝に築地市場に出かけた。場内の『センリ軒』でコーヒーとプリン二つを食べて、水産棟に入る。ボクにはジンクスがあって、この店でプリン一つだけだと仲卸に魚が少なく、二つ以上食べると仲卸に魚が多いのだ。だから仕方なく「ニコプリ(二個プリンの略)」しているだけ。好きで食べていると思われると心外なので、念のため。

いつも珍しい魚を確保してくれている店に立ち寄ったら、ちょうど活けの「そげ」を片っ端から締めているところだった。三月の声を聞くと小振りなヒラメである「そげ」の値段が上がる。社長の前にいるのはまるで巨大なラグビーボールのような若い板前さんであったが、真剣にこの「そげ」を選んでいるようだ。

「この人、魚選びの達人なんだよ」

「へー」

目の前には一キロ弱の、「そげ」が何枚も並んでいる。ラグビーボールさんは迷わず一枚を選んだ。

「どうして、これがいいってわかるんですか? みな同じに見える」

「全体を見てるんで、これだ、とは言えないんですけど、上から見て丸い方がいいことだけは確かです」

「そんなに味が違うんですか」

「まったく違いますね」

ついでなのでボクの「そげ」も選んでもらった。こちらは飛び抜けて小さい五百グラムサイズだった。

「もっと大きい方がいいんじゃー」

「そうじゃないんです。食べたらわかります」

並んだのを何度見ても「上から見て丸い」ということすらよくわからない。お昼に食べても、味がいいはずだというので、昼下がりの『市場寿司』に持ち込んで食べてみた。

「おいおい、何をもってくるかと思ったら、これかよ。それで?」

「今すぐ下ろして食べてみよう」

「下ろすのはいいけど、叩くと身がぴくぴくしてるし、まだ早いだろ」

二切れ切りつけて、一、二の三で食べてビックリ仰天。強い甘味があって、心地よい食感が楽しめて、そのくせ後味がさらりとしている。

「もう一きれ、欲しいって味だ」

「違う、二切れも三切れも欲じー」

さすがにこの食感ではすし飯と馴染まない。午前中の築地でのやりとりを話して、店を後にした。

翌日出直しての握りが、これまた絶品であった。たかさんが、

「こりゃへたなヒラメよりも上だ」

「違うなー。ヒラメよりもうまい『そげ』もあるってことだね」

なにしろ切りつけたネタの味に奥行きがあるというか、こくがある。甘さは明らかに脂からのものではない。脂があまりのっていない魚が、これほどにうまい、ということを初めて知った気がする。

奥の常連さんが、おもむろに「これ食べるとヒラメ釣りに行きたくなりますよー」というので、

「上から見て丸いヤツ釣ってきてくださいねー」

「わかりました!」

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。


文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2016年4月15日号の掲載情報です。

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