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釣る前に、食べる前に、シロギスという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、シロギスという魚を知ろう!

シロギスは、キス科に属する海水魚の一種。東アジアの沿岸域に広く分布する。別名キス。体色は、背側が淡黄褐色で、腹側が白い。そのため、青から緑がかったアオギスに対し、シロギスと呼ばれる。

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シロギス(スズキ目キス科キス属)の生態

北海道南部から九州。朝鮮半島、台湾、東南アジアの浅い砂地に生息している。産卵期は初夏から秋で長い。国内で水揚げされるキスの代表的なもの。
古く戦後すぐの頃までは、釣りのキスと言えばかなり大型になり引きの強いアオギスだった。そして食べるならシロギスと言われていた。キスの語源は「きすご」で室町時代にさかのぼることができる。由来・意味は諸説あるが「きす=アオギス」で「その子供」の意味合いで「きす子」だろうと思っている。アオギスが健在な地域では、食べておいしいシロギスを本ギス、真キスなどと区別している。

シロギスの値段は?

今、スーパーで売られている一般的な魚を調べているのだが、都内でいっこうに見かけないのがシロギスである。釣りの世界では庶民的な対象魚であるが、流通の世界では庶民の手には届かない高級魚なのだ。小さくても高いが、大型になればなるほど値が跳ね上がる。ヒジタタキ級の30センチ、300グラム近いものになると、築地場内の上物専門店(高級な魚を売る店)のど真ん中におかれて、キロあたり4000円前後になる。卸値1尾1200円とは天然マダイよりも高い。狙え! ヒジタタキなのだ。

シロギスの釣行レポート

内房・富浦は人気ボート釣りのスポットだ。このエリアの特長は何と言っても「引き船」によるポイントへの送迎だろう。これによってボートを遠くまで漕ぐのが苦手な人でも手軽に楽しむことができるのだ。「みなさんにもっと簡単に楽しんでもらえるようにやっています。ターゲットによってポイントも選べます」と話す、「富士屋ボート」店主の高木正太郎さん。

金沢漁港「鴨下丸」では、通常の一日船よりも少し釣り時間が短いショートシロギス船を出船している。そのぶん料金もリーズナブルな設定で、ファミリーで利用するお客さんには嬉しい割引もあるのだ。もちろんレンタルタックルも充実し、仕掛け類も受付所や船上で購入可能なのだ。

晴れると日中は暑いこの季節。朝は涼しくて気持ちいいので、早起きして釣りに行きたくなりますね。5月25日、金沢八景「荒川屋」さんより半日船のシロギスへ行ってきました。

「シロギス」の寿司…キスは海の貴婦人というが、味の点では女王様だ

ゴールデンウイーク近くになり、だれしも山へ海へと心が馳せるようで、孫だくさんの、たかさんも温泉宿のパンフレットから顔を上げようとしない。「どこへ行くの?」

「石和温泉だけど」

「今年も?」

いつもの宿に親族うち揃っての、いつもの旅。多摩に住んでいて、石和温泉というのが旅と言っていいのか? これは疑問だな。

小腹が空いた、というと冷蔵庫から、なにやら出してきて、すし飯をくるりと巻き込んで、出してきた。

「〈おもだか〉だよね」

「そう、キスの〈おもだか〉」

酢じめのキスですし飯をくるみ、尾鰭を後ろでピンと立てている。江戸時代にはやった髪型〈おもだか〉に似ているので、この名がある。キレイだけど少し酢がきつい。

「酢が強すぎるよ」

「そりゃそうさ、あんこ椿だもの」

〈あんこ椿〉とは「三日遅れの」ということで、かなり前に作ったネタという意味。「そろそろ捨てようか?」と思ったけど、もったいないのでボクに出したようだ。

これにはわけがある。五日ほど前のこと。市場の仲卸に見事なシロギスが入荷してきた。瀬戸内海香川産で、なかなか手が出ない値段であった。その前で悩みに、悩み抜いていたのが、還暦オヤジのたかさん。

そこにちょうど通りがかった、ベテラン釣り師、そば店の浅やんが、「やっぱりキスは東京湾に限るね」とか、「こんなキスなら毎週一束は釣ってるよ」とかうるさく言うので、たかさん無分別にも、ありったけ仕入れてしまったのだ。

当日、翌日は生で、お後は酢じめで提供して、あまりにも高額だったので、酢が回りすぎても捨てられないでいたわけだ。

やはり春のキスはうまい。生の、上品でいながら、じわりと浮き上がってくるうま味に、たっぷりのった脂の甘さ。独特の風味があるのもたまらない。キスは海の貴婦人というけれど、味の点では女王様だ。

日持ちを考えて酢で締めるというのは、江戸時代以来の伝統的なわざであるが、これもまことにうまい。二かん、三かんと続けざまに食べても飽きが来ない。老すし職人曰く、「江戸っ子好みの小粋な味」が、食べると、わかるのである。

四月、五月、梅雨明けまでの定番的なネタなので、すし職人はキスを好んで仕入れていく。『市場寿司』は庶民的な店なので、手頃な値段の日にポツンポツンと仕入れて、通の客に出している。

「海はオレの自動販売機」とのたまう、釣り名人、浅やんも、ぽんと十尾ほど店に置いていった。

「やっぱり東京湾なの?」

「いや、これは相模湾。今年の相模湾はうまいよー」

うまいものには目がないという、おいしんぼ釣り師なので、小魚なのにちゃんと活け締めにしている。

こいつを握ってもらったら、五月の風を思わせてくれるような、爽やかな味だった。

そして、会議や、仕事が立て込んでいたりで、二日ぶりに『市場寿司』に顔を出すと、また〈おもだか〉に仕立てたキスの酢じめが出た。見た目には酢が回りすぎたように白いが、今度はうまいのである。しっかりキスの風味がする。ほんのり甘みがあるのも、また、いい感じなのだ。

「これ、違うね」

「ご隠居(八王子最年長のすし職人)に聞いて、昆布や、(少量の)砂糖を使ってみたんだ」

浅やんに、お礼のケータイをすると、「間接キッスだ」と笑う。釣ったシロギスは「キスだから全部チューする」のだという。

想像するとかなり気持ち悪い!

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2013年5月15日号の掲載情報です。

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