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「メジナ」の寿司…脂の甘味とともに、すし飯と一体化して喉に消える

「メジナ」の寿司…脂の甘味とともに、すし飯と一体化して喉に消える

ついこの間、大雪が降ったと思ったら、桜咲き、そして散り、いつの間にか汗ばむ季節となりにけり、なのだ。夏の魚、イサキの脂がのってきた。タカベもうまい。そこに意外な主役が登場。それが誰あろう、メジナ君である。刺身もうまいし、塩焼きもグー、おまけに、みそ汁がチョーグー。メジナ一尾でフルコースも悪くない。

脂の甘味を感じさせながら、すし飯と一体化して喉に消えていく。白身だが思った以上にインパクトがある。うまい!

ある日、『市場寿司』に顔を出したら、ご近所の釣り名人・浅やんからメジナ(?)が届いていた。

「とても脂がのってるし、磯臭さもない。いいメジナなんだ、これが」

たかさんが三枚下ろしにした半身を見せながら、うれしそう。

「あのさ、種類がわからない魚はボクに見せてから下ろして、って何度も言ったよね」

「これ相模湾のだってからメジナでしょう。正真正銘のメジナ」

たぶんメジナだと思うが、クロメジナとか、もっとレアなオキナメジナの可能性もゼロではない。

「それで……」と言うと、焼霜造りをおつまみにと出してきた。脇には名残の蕗の薹の天ぷらが添えている。これはお隣の食堂からの差し入れらしい。この、ほとんどメジナが、メチャクチャにうまい。四月半ばなのに、脂がのっている。ノンアルコールビールを飲み干した途端に、握りが二かん目の前に来た。

「グッタイミン」

「テカテカテカテカ」

こんなやりとりをしていたら、明らかに還暦過ぎのおばちゃん達が、「懐かしいね」、近所の女子美大生が「??」という顔をしている。

握りは皮を引いている。皮が硬めなのでこの判断もいい。脂の甘味を感じさせながら、すし飯と一体化して喉に消えていく。江戸前ずしの基本からして正しい。白身だが思った以上にインパクトがある。うまい!

美しい美大生たちの丼にもサービスでメジナを入れている。その上、真ん中に鎮座するイクラの量も「多すぎじゃない」。「メジナは初めて食べました」という彼女たちにも大好評。浅やんにお礼言わなければ。

さて、今年の春は新著のために淡水魚を探しに栃木県へ、磯の生き物を撮影しに三浦半島へと忙しい。

その三浦半島佐島にあるのが大楠漁協。磯歩きのついでに、定置網の水揚げを見させていただく。沖合水深六十メートルにかけられた定置網には、十キロ超えのマダイや、メジナ、スズキなどがわんさか。古いつきあいの漁協職員のシンさんに「大漁だね」と言うと、「ぜひ春のメジナを食べてみてください」と一キロ近いメジナが入った発泡を一箱くれた。「ありがとう!」。

帰宅後、これをそっくり『市場寿司』に提供して、「三浦半島佐島ちらし丼」にして楽しむ。さて、スズキにウマヅラハギ、マルアジ、マアジなどのなかでダントツに味がよかったのがメジナ。たかさんも、

「春メジナってうまいんだね」

「磯臭さがまったくないし、脂がのっているので硬くない」

「これでもっとお客さんに知名度があると、儲かるんだけどね」

「いただきものでもうけちゃダメ」

翌日は、これをおつまみにしてあきる野市の銘酒「千代鶴特別純米」をやり、最後に前回のメジナ同様皮引きの握りでしめる。改めて、春メジナの味のよさに感動する。

山梨から来たというご夫婦にも二かんずつ出すと、こちらも大絶賛。

「相模湾のメジナは天下一品」

後日、相模川の河原で浅やんと、その孫のユー君とで魚釣り。

お昼には七輪でハヤを焼き、片貝で釣ったという大ヤリイカの一夜干しを焼いて、あきる野市の「喜正」をごくり。と、そこに浅やんの仲間が次々に、堀りたての竹の子に鹿肉、猪肉、山菜、なんと平塚で釣ったというマダイまで持って来てくれる。それを受け取る姿、まるで献上品を受け取る高貴な殿様のようだ。

「浅やん、この前のメジナだけど」

「ああ、さっきマダイくれた人にもらったの。たぶん平塚か茅ヶ崎」

「むむ」、ただのそば屋の浅やんが、突然偉大な人に「シュワッチ」と大変身したよう。人間て奥が深い。

メジナ(スズキ目メジナ科メジナ属)

新潟県、千葉県以南の日本海、東シナ海、太平洋、瀬戸内海の、沿岸の岩礁域に生息。
メジナは東京周辺での呼び名。西日本や日本海では黒いので「くろや」とか「くろ」、近畿や和歌山では「ぐれ」という。北陸ではサケがとれはじめて、水温が下がってくると定置網にたくさん入るので「さけのいおのつかえだい」と呼ぶ。凪いだ海よりもあれた海が好きらしく、島根県松江などではメジナが大量に揚がると「海が荒れている」と言う。典型的な磯魚で、イシダイとともに沿岸の岩礁域にいる魚のなかでも、もっとも大量に流通する。主な産地は山陰などの日本海。寒の「くろや」は鯛よりもうまい、と山陰の人は語る。これは関東でも同じ。逆に温かくなると「猫またぎ」と言うが、これは本当だろうか?
釣魚としても知名度が高いが、流通上もときに大量入荷するためよく知られている。希に磯臭いものがあるので値が安い。1キロを超える立派なサイズでも卸値1キロあたり800円前後。最近、活け締めが入荷してくるが、それでも卸値1キロあたり1000円ほど。1キロサイズ1尾で1000円くらい。ようするに魚は値段では善し悪しはわからない、ということだ。

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2014年6月1日号の掲載情報です。

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ゴマフエダイはスズキ目フエダイ科フエダイ属。本州の太平洋側、岩手県でも発見されているので、生息域ははっきりしない。相模湾や駿河湾でも若い個体、稚魚が発見されている。

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