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釣る前に、食べる前に、シキシマハナダイという魚を知ろう!

釣る前に、食べる前に、シキシマハナダイという魚を知ろう!

シキシマハナダイは、スズキ目シキシマハナダイ科シキシマハナダイ属の魚。水深50~200mに多く生息する。岩礁域や、砂礫底などで見られる普通種。

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シキシマハナダイ(スズキ目シキシマハナダイ科シキシマハナダイ属)の生態

山形県・相模湾から九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸。岩と砂地の入り混じるような水深45~100m前後に多い。
和歌山県でハナムロというが意外に呼び名が少ない。これはあまりにも華やかなために、食指が動かなかったためだと思う。だいたい、古くはハナダイ類に近い種なので「はなだい」、その上に「しきしま」をのせた田中茂穂の命名の動機がまったくわからない。「敷島」とは現在の奈良にある地名で、宮が置かれたところ。戦艦の名前にもなっている。そして明治末に売り出されたタバコに「敷島」というのがある。たぶん標準和名をつける場合に、なにかと遊び心を感じさせる田中茂穂のことだから、当時自分が吸っていたタバコの名をつけてしまったのかも。

シキシマハナダイの値段は?

流通上の価値だが、実は一定の評価もなければ流通した形跡すらない。日本各地を歩いているが、一度も市場などで見ていないのだ。「食べられる魚」なのに不思議である。ということで1尾あたりの値段は0円でしかない。今回、食べてみて、意外に美味しいので驚いた。釣り師の皆さん、釣り味も悪いし、食べてうまそうにもないが、一度食べてみていただきたい。

「シキシマハナダイ」の寿司…焼霜にすると、皮に風味があり味がある

ある朝、ジョギング姿の若いカップルが店の前を行ったり来たり。意を決したようにのれんをくぐって、店の隅っこに座り、おまかせ握りを注文。たかさんの「いい陽気ですね」に「はい」なんて答えている。

いいご夫婦のようだ。うらやましい。近所の釣り名人・浅やんがくれたアジの握りに舌鼓を打ちながら、

「アジが美味しくなったってことは、そろそろ春も終わりだね」

「そうだね。花の季節が終わって、若葉の季節。そして梅雨なんだね」

なんだか年寄り臭い会話になる。五月になった途端、珍魚、珍カニ、珍イカなどが日本全国から届く。

いろいろ届いた中でもいちばんの美味は、三重県尾鷲市から来た一キロ超えのデブイサキ。イサキというよりも、まるでマグロの大トロを思わせる舌触り、口溶け感である。旧友が伊豆大島に行って釣り上げたというアカハタもうまかった。

日本全国から届いたうまい魚に、口福感で胸がいっぱいになる。

仕入れが楽だ、とたかさんが、

「幸せいっぱい胸一杯」

と歌い出す、その曲がわからない。「何それ?」と聞くと、ヒョウ柄タイツのオバチャンが、「島倉智恵子よーん」、その隣のオバチャンが「胸一杯」じゃなくて「空いっぱいよ」。

なんて下らないことで大騒ぎしていたら、市場で塩乾や総菜を売っている、仲卸「福泉」の福さんが、「これあげる」と顔を出す。ビニール袋につまった、それがやけに派手派手しい。なんとシキシマハナダイである。この魚が釣れるポイントというと、確か小田原早川港近くではなかったか? と聞いてみると、

「近い、けど、もっと真鶴寄り。いろんな魚が釣れておもしろかった。また来週も行くからね」

店じまいして、たかさんとあれこれ、食べてみる。無難なのは煮つけ。美しい魚体がしょうゆに染まった姿は、なんだか無残ではあるが、捨てがたい味である。塩焼きは、たかさん曰く「だめでしょう」だった。

そして握りは、まずは皮を引いて普通に仕立てると、たかさんが胸の前で×。皮目に熱湯をかけての霜皮造りも×。最後に焼霜にしてやっと○。皮に風味があって味がある。

「やっぱり美しすぎる魚は、中身は平凡なんだねー、外皮がいい」

この皮がうまいだけの魚は、兵庫県明石からオコゼが送られて来て、あっさりと忘れ去られてしまった。「見た目の悪い魚ほど味がいい」。美魚の後にオコゼが来て、まさに「お後がよろしいようで」。

さて、翌週も福さんが『市場寿司』に顔を出し、なんとまたシキシマハナダイを置いていった。アジもたっぷり釣れたと言うのを聞いて、たかさん「アジの方がよかった」。ボクは雑魚がうれしいので「福さん、釣り名人だ」なんて思ってしまう。

たかさんがネタケースに丸のままのシキシマハナダイを飾っていると、またあのすがすがしいジョガー夫婦がやってきて、またまた、お任せにぎりを注文している。

若さいっぱいの奥様が、ネタケースの美魚に目をやり、「これ、なんですか?」にたかさんが偉そうに解説。「おいしくありませんが」と一かんオマケ。それを仲良く半分こして食べて、「おいしい。もう一個、今度は皮だけ、じゃダメですか」にこれまたイケメンのダンナが、「それは悪いよ。ボクが身の方食べてあげる」なんて、いい感じ。

なんと皮握りを三かんも追加、ダンナは、そんなに味がいいとは思えない身を三かん。「美味しい」という奥様にダンナの顔がほころぶ。

「いい夫婦」と感心していると、常連のヒョウ柄のオバチャンが「そうかい、昔の自分を見てるみたいよ」と、怖いことを言うのであった。

◆協力『市場寿司 たか』
八王子市北野八王子綜合卸売センター内の寿司店。店主の渡辺隆之さんは寿司職人歴40年近いベテラン。ネタの評価では毎日のようにぼうずコンニャクとこのようなやりとりをしている。本文の内容はほとんど実話です。

文責/ぼうずコンニャク
魚貝研究家、そして寿司ネタ研究家。へぼ釣り師でもある。どんな魚も寿司ネタにして食べてみて「寿司飯と合わせたときの魚の旨さ」を研究している。目標は1000種類の寿司を食べること。HP『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』も要チェック。

以上の記事は「つり丸」2014年6月15日号の掲載情報です。

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